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相続税における名義預金の判断(令和3年9月17日裁決の一部)

相続税の税務調査で、亡くなった方(被相続人)が子供や孫の名義の預金を作り、その預金口座にお金を送金している場合に、預金名義の方の財産になるのか、亡くなった方(被相続人)の財産(相続財産)になるのか、よく問題になります。

これについては、お金を送った方とお金をもらった方の双方が、お金をもらったお金を送ったという認識があり、また、もらった方がその貰ったお金を自分で管理しているか等の状況により変わってきます。

名義預金で問題となった場合、亡くなった方(被相続人)の財産(相続財産)として認定され、相続税の対象となることが多いのですが、このケースでは、名義人の預金として相続財産の対象とはなりませんでした。

 

(状況)

Aさんは、平成29年1月○日に死亡し、その相続が開始した。

Aさんには、妻とは別の方のBさんとの間にCさんがおり、CさんはAさんに認知がされ相続人となっている。

Aさんは、生前に平成13年8月吉日付の「贈与証」と題する書面を作成し、この贈与証には、「私は、平成拾参年度より以後、毎年八月中に左記の四名の者に金、〇〇〇〇円也を各々に贈与する。但し、法律により贈与額が変動した場合は、この金額を見直す。」と記載され、Cさんを含むAさんのお子さんたちの住所及び氏名が記載の上、Aさんの署名押印がされていた。

Bさん(Cさんの母)は、Aさんのグループの一つで代表取締役を務めるとともに、グループの経理事務を担当していた。

Bさん(Cさんの母)は、平成13年8月10日、Aさんの依頼により、T銀行○○支店において、Cさんを含むAさんのお子さんたちの普通預金口座を開設し、平成13年から平成24年の各年に一度、Aさんから依頼され、それぞれの名義の口座に〇〇〇〇円を入金した。

Bさん(Cさんの母)は、Cさん名義の預金の通帳及び印章を、口座開設当時から平成30年にCさんに引き渡すまで保管していた。

Cさん名義の口座には、口座開設時から平成24年まで、利息を除き、各年に一度の〇〇〇〇円の入金以外に入金はない。

 

(税務署の主張)

<贈与の成立の有無について>

書面による贈与が成立したと認められるためには、その前提として贈与者と受贈者の合意が求められ、その上で贈与者の意思表示が書面によりされていることが必要となる。したがって、贈与者の意思表示が書面により確認されたとしても、当事者間における贈与の意思の合致が認められない場合は、贈与契約自体が成立しないこととなる。

Bさん(Cさんの母)は、贈与証の具体的内容を理解しておらず、Aさんの指示に従いCさん名義の口座への入金を行っていたにすぎず、これらの入金が、Cさんへ贈与されたものと認識していたとは認められない。したがって、AさんとCさんとの間で贈与契約が成立していたとは認められない。

<名義預金の贈与はいつか>

Cさんが、成年に達した以降、贈与証の内容を把握していたと認められる証拠はないこと、平成30年に銀行印の紛失手続を行ったこと及びCさん名義も預金を、一旦、相続財産として修正申告したことから、平成13年から平成24年の各年において本件被相続人と請求人との間で贈与契約が成立していたとは認められない。

 

(不服審判所の判断)

<贈与の成立の有無について>

贈与証の内容は、毎年〇〇〇〇円を贈与するというものであって、Bさん(Cさんの母)にとってその理解が特別困難なものとは言えず、また、Bさんはグループの経理担当として勤務していたことを併せ考えると、Bさん(Cさんの母)が贈与証の具体的内容を理解していたとみるべきである。

Bさん(Cさんの母)自身が送金手続を行っていたことからAさんの預金口座からCさん名義の口座への資金移動について、AさんからCさんへの贈与によるものであると認識していたと認めるのが相当である。

<名義預金の贈与はいつか>

Bさん(Cさんの母)が、平成13年当時、Cさんの法定代理人として、Aさんからの贈与証による贈与の申込みを受諾していたと認めるのが相当であり、平成13年から平成24年の各年において贈与は成立していたと認められる。

したがって、Cさん名義の預金は、相続財産には該当しない。

 

(日々でやるべきこととは)

贈与は、お金を送った方とお金をもらった方の双方が、お金をもらったお金を送ったという認識が必要であり、また、贈与契約書等を作成して形式的に問題ないようにしておく。

税務署は、贈与は通常あまり行われていない取引と考えており、相続人は贈与についてきちんと理解していないと考えている感じがあります。贈与について記載してある資料やHPなどを保管しておいて、税務署に対応できるようにしておくことが必要です。

今回のケースでは、預金口座の管理については、税務署側は特に問題にしていないようですが、必ず、贈与された方(法定代理人(保護者)も含む)が通帳、印鑑等の管理を行っておくことも必要です。

今回は、名義預金が相続財産に含まれないという判断がされましたが、非常にレアケースではないかと思います。裁決書に記載されていない他の事実があり、それも含め相続財産に含まれないという結果となったのかもしれません。

 

裁決

(令和3年9月17日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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