造成費用の資産計上・必要経費計上の区分 その3(平成28年3月3日裁決の一部)
土地の造成を行った場合、様々な費用がかかります。整地工事、外構造成工事、土留め工事、境界等整備など、それぞれの土地状況によって、工事の種類、金額等千差万別です。
土地の取得費に算入すべきものとなる工事や構築物として資産計上される工事、必要経費として認められる工事等ありますが、その区分は、一概に確定できず、その内容を確認しながら判断することになります。
(状況)
Aさんは、B社に店舗用地として貸し付けるための土地の造成を行うために、C社との間でその土地に係る造成等工事を代金○○○○○○円で請け負う旨の請負契約を締結した。
土地に係る造成等工事には、外構工事・造成工事、乗入・側溝改修工事、雑工事に区分されている。さらに、雑工事の内容は、境界等整備に係る費用と土壌汚染調査に係る費用に区分される。
境界等整備に係る費用は、隣地との境界線を明確にし、これを越えて建っていた隣地の工場建物の一部を減築し壁面を隣地側に移した上、工場建物の外壁の塗装や張替えを行ったものである。
土壌汚染調査に係る費用は、以前この土地にあった自動車修理工場で使用していたバッテリー液、オイル及び廃油等の地中への染み出しの有無について土壌汚染調査をしたものである、なお、土壌汚染はなかった。
(税務署の主張)
造成等工事に係る費用は、「改良費」に該当し、土地の取得費に算入すべきものであるから、Aさんの不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
仮に、造成等工事に係る費用に改良費に該当しないものがあるとしても、それは、解体工事に伴う費用ないしこれに付随する費用であると認められるから、不動産所得の必要経費に算入することはできない。
(不服審判所の判断)
境界等整備は、土地の引渡しまでに隣地等の境界線を確認した上でAさんが相手先にこれを明示し、境界等について苦情や紛争が起こった時はAさんが解決しなければならないとの借地権設定契約の条項を踏まえて、Aさんが隣地との境界線を明確にし、隣地の工場建物の一部の減築、外壁の塗装工事及び張替え工事を行ったものであると認められる。
これらの工事等の内容からすると、境界等整備は、土地を改良するものではないし、その価額を増加させるものでもないが、借地権設定契約を履行するために必要なものと認められる。
そうすると、境界等整備に係る費用は、土地の貸付けに係る業務と直接関係し、業務の遂行上必要なものと認められるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
土壌汚染調査は、長年にわたって自動車修理工場の敷地として使用されてきたことにより土壌に有毒な物質が含まれることが危惧されたことから、土壌汚染の有無を調査したものである。
土壌汚染調査の結果、土壌汚染の事実はないことが確認されたものの、土壌汚染調査は、土地を改良するものではないし、その価額を増加させるものでもない。
そして、土壌汚染調査が土地の貸付けに当たって行われたものであることからすると、土壌汚染調査に係る費用は、土地の貸付けに係る業務と直接関係し、当該業務の遂行上必要なものと認められるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。
(日々でやるべきこととは)
土地の造成工事等の見積書等で工事内容確認し、以下の区分で資産、必要経費に区分することが必要です。
土地の価額を増加させる部分に対応する金額
・・・改良費として土地の取得費に算入する
防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるもの
・・・土地もしくは構築物の取得費
建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等の工事に要したと認められるもの
・・・建物、構築物等の取得費
公共的施設の設置又は改良のために支出したものと認められるもの
・・・税務上の繰延資産
通常の管理又は修理に係る修繕費等に係る費用
・・・必要経費
土地に計上されてしまうと減価償却費を計上することができませんので、土地と有形・無形固定資産にどちらでも計上することができるものであれば、有形・無形固定資産に計上したほうが減価償却費をとおして、必要経費を計上することができ、税務上有利になります。
裁決
(平成28年3月3日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
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