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建物の解体費用の資産計上・必要経費計上の区分 (平成28年3月3日裁決の一部)

建物を解体したときに発生する費用は、通常、除却費用として必要経費に算入されると思います。しかし、土地を更地にしなければならないことにより建物を解体したり、無償で賃貸借を行っていた建物を解体したりした場合には、土地の取得費に算入される場合があります。

 

(状況)

Aさんは、B社と平成23年12月19日付で事業用定期借地権設定契約のための覚書を取り交わした。

Aさんは、C社と平成23年12月19日付で建物の解体工事を代金○○○○○○円で請け負う旨の請負契約を締結した。

取り壊した建物は平成6年からAさんの同族会社となるD社に賃貸され、平成21年11月までは賃料の支払はあったが、平成21年12月以降賃料の支払はなかった。

D社の法人税の確定申告書等において、平成21年11月までは賃料について費用計上されていたが、平成21年12月以降の賃料について費用計上されていない。

Aさんの所得税の確定申告書でも、賃料につき平成21年11月分までは不動産所得として確定申告しているが、平成21年12月分以降の賃料の申告はない。

 

(税務署の主張)

所得税法では、「不動産所得を生ずべき業務について生じた費用の額」を必要経費に算入する旨定めている。したがって、対価を伴わない使用貸借の場合、使用貸借の対象となった不動産は、不動産所得を生ずべき業務の用に供された資産とはいえないから、当該不動産に係る費用は不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に該当しない。

Aさんは、平成21年12月から建物を解体するまでの間、当該建物を無償で貸しており、使用貸借の対象であったから、解体工事に係る費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に当たらず、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

 

(不服審判所の判断)

所得税法では、その年分の不動産所得、事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定している。

「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、これらの所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものに限られると解される。

そして、その判断は、単に当該業務を行う者の主観的判断によるのではなく、当該業務の内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って客観的に行われるべきである。

所得税法における「不動産所得を生ずべき業務」とは、不動産等の貸付けによる所得を生ずべき業務、すなわち、対価を得ることを目的とする不動産の貸付けをいうものであり、対価を伴わない使用貸借は、「不動産所得を生ずべき業務」に該当しないと解するのが相当である。

建物賃貸業においては、建物の取得、賃借人の募集、賃借人への貸付け及び建物の取壊し・廃棄までが業務の一連の流れであって、建物の取壊し費用は、建物賃貸業を行う上で通常発生する費用であるといえることに加え、賃貸借期間中に業務用資産である建物の取壊し・廃棄を行うことは不可能であることからすると、当該建物が家事用に転用されたなどの事情がない限り、賃貸借契約終了後の建物の取壊し・廃棄は、いわば建物に係る貸付業務の残務処理的な行為であるというべきである。そうすると、賃貸借契約終了後、速やかに行われた賃貸用建物の取壊しは、当該建物に係る貸付業務の残務処理的な行為であり、その取壊し費用は、当該建物に係る貸付業務と直接関係し、かつ、当該業務の遂行上必要なものとして、必要経費に該当すると解するのが相当である。

したがって、取り壊した建物が貸付業務に供されていた業務用資産である場合において、その取壊しが賃貸借契約終了後、速やかに行われ、当該建物に係る貸付業務の残務処理的な行為と認められる場合には、当該取壊し後の敷地の利用目的にかかわらず、当該取壊しに要した費用は必要経費に該当することになる。

この点に関しては、賃貸等の業務の用に供しない建物についても、その取得から使用、取壊し・廃棄までが一連の流れであることに変わりはなく、これを業務用資産と異なるように解すべき理由は見当たらない。そうすると、当該建物の取壊しは、業務の用に供されていない資産を任意に処分する行為にすぎないから、当該取壊し後の敷地の利用目的にかかわらず、当該取壊しに要する費用は、非業務用資産の処分に要する費用すなわち家事上の経費であって、これを必要経費に算入することはできないと解するのが相当である。

建物は、平成21年11月末までは賃貸の用に供されていたものの、同年12月以降は、使用貸借契約に基づき、D社が無償でこれを使用していたのであって、賃貸の用に供されていない。

そうすると、平成21年12月以降における建物は、不動産所得を生ずべき業務の用に供されていない非業務用資産に該当し、その取壊しは、業務の用に供されていない資産を任意に処分する行為にすぎないことになるから、取壊し後の敷地の利用目的にかかわらず、解体工事に係る費用は、非業務用資産の処分に要する費用すなわち家事上の経費であって、これを不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない

 

(日々でやるべきこととは)

親族や同族会社等に無償で建物を賃貸借しているケースは多くあります。

将来、その建物を解体し、その土地の上に賃貸物件を建設して、不動産所得を得るこ計画を考え始めた場合には、その段階において少なくとも有償の賃貸借にしなければ、その建物の解体費用は不動産の必要経費に算入することはできません。

有償にした場合でも、その有償に変更した時期が解体時期と直近である場合には、無償で賃貸博していた物件と認定されるリスクがありますので、ご注意ください。

 

裁決

(平成28年3月3日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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