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第三者名義で納付した源泉所得税の法的効果-実質所得者が納付すべき源泉所得税を第三者名義で納付した場合は実質所得者が納付したとは認められない!- 016 (平成20年6月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 東京地裁平成20年1月25日判決(国側 勝訴・相手側控訴)>

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三者名義でなされた確定申告に係る事業収入・経費が実態面から原告に帰属するものと認定できる場合においても、第三者名義でなされた源泉所得税の納付は、外観上一見して原告の通称ないし別名と解する余地がない以上、それを原告に係る源泉所得税の納付義務の履行と認めることはできない。

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複数の会社を経営している場合、源泉税や法人税等の納付を誤って、別の会社の納付書で納付してしまうことは稀にあります。

 

この場合、間違って納付された税金を本来の納付すべき会社で納付したことにできるのでしょうか。

 

参考になる裁判例が以下にあります。

実質的な経営者が、その実質的経営者が納める税金を少なくするために、形式的な経営者を複数人準備し、それぞれ所得税の申告をさせ、また、給与等の源泉徴収についても、形式的な経営者名義に納付させていました。

税務調査が入り、形式的な経営者の個人の所得は実質的な経営者に帰属するとなり、実質的な経営者に更正及び重加算の処分がなされました。

(まあ、当たり前の結論です。)

 

給与等の源泉については、形式的な経営者に誤納金として還付され、また、実質的な経営者に源泉を納付するよう(納税告知処分)及び重加算の処分がなされました。

 

実質的な経営者は、還付については、本来、実質的に負担した人(実質的な経営者)に還付されるべきものであり、そうであるならば、還付分が充当され、納税告知処分は取り消されるべきであると主張しました。

裁判所の判断としては、

法的安定性及び法律関係の明確性の要請が強く支配する租税法の下において、形式的な経営者の名義をもってされた源泉所得税の納付は、これを実質的な経営者の通称ないし別名と解する余地がない以上、実質的な経営者に係る源泉所得税の納付義務の履行としてされたものと認めることはできない。

として、実質的経営者の主張を退けました。

 

申告に関しての所得税の税務調査で税務署は、実質的な面を主張し、実質的な経営者の所得として処分しました。

一方、源泉に関しての所得税について税務署及び裁判所は、形式的な面を重視し、形式的な経営者が納付したということになりました。

つまり、税務調査で実質的に負担していると判断している(申告に関しての所得税の処分)にも関わらず、納付したとするのは納付書に記載された人となるということです。

 

税務調査で、税務署が実質的に負担している人を認識しているのにも関わらず、それを認めていないのですから、単純に、誤って別の人が納付してしまった場合には、当然、その納付は認められないことになります。

 

確かに、納付を間違えてしまっているのですから、形式的には、間違えて納付した人に還付し、本来納付すべき人が改めて納付すべきことであるということはわかります。

 

しかし、税務の中では、実質課税がなされるのですから、税務署、間違えて納付した人、本来納付すべき人の三者が合意等をし、実質的に問題ないのであれば、本来納付すべき人が納付したことにできないのでしょうか。

 

税務署には、きちんとお金は納付されているのですから。。。

 

 

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