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弁護士報酬等でも現金主義はNG -収入金額の計上すべき時期について- 017 (平成20年10月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題

して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 東京地裁平成20年1月31目判決(国側勝訴)>

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弁護士報酬等の収入計上時期を判断するには、①弁護士事務所の報酬体系、②支払を受ける金銭の具体的な性格、③依頼者との契約内容等から、その報酬等を受領する権利の性質を十分に検討した上で、収入すべき権利が確定した時期をそれぞれ判定することが重要!

収入計上時期の判断に当たっては、取引の態様、契約内容等の事実関係を把握することによって、支払を受ける金銭の具体的な性格を確認するとともに、それを明らかにする証拠資料の収集が必要となる。その際、対象業種における一般的な取引慣行を把握しておくことも有効である。

調査着手時には、事件管理・収入の管理及び未収入の回収の方法等を十分に聞き取り、証拠として、どのデータを把握(収集)すれば、弁護士事務所の全貌が把握できるかを見極めることが必要である。

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弁護士の着手金は、いつ、収入計上されるべきなのでしょうか。また、弁護士が支払を受けた概算実費も、いつ、収入計上されるべきなのでしょうか。

 

着手金、概算実費については参考となる裁判例が以下にあります。

 

弁護士の着手金は、弁護士が裁判等を受任したことにより、依頼者から依頼事項の成功、不成功に関わらず、受け取った対価で、通常、裁判等が開始される前に受け取るもので、その金額も確定される。したがって、着手金は、弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で収入の原因となる権利が確定する。受任後の事情により、着手金の全部又は一部について返還義務が生じたとしても、それは所得税法の規定に従い、別途処理すれば足りるものである。

 

概算実費とは、通常の郵券、交通費、送料等に充てることが想定される金員であるが、本件においては受任時に支払を受け、事件終了後清算を予定されていないから、受任時に収入として計上すべきものである。

 

裁判所の判断としては、

通常であれば、返還義務がないものであれば、入金した、もしくは、入金金額が確定したときに、役務提供がなされなくても収入計上しなさい。

ということになります。

 

会計処理は画一的でなく、業界特有の会計処理があります。弁護士の着手金や概算実費の会計処理が業界特有ということであれば、それほど、問題ないのかもしれません。

(弁護士の先生、あまり突っ込まずにごめんなさい。)

 

ただ、これが一般的な話となると、大きな問題が生じます。

 

例えば、アプリ開発システム開発などを行った時に着手金や中間払を行うことは普通にあります。もし、弁護士の着手金と同じ理論で課税されるとなると未完了であっても収入計上しなければならないことが生じる恐れがあります。

 

一般に公正妥当と認められる会計処理を、きちんと主張し、弁護士の着手金等の課税は、業界特有の処理として、考えるべきでしょうね。

 

なお、この記事を参考にした「調査に生かす判決情報017」中の「商品引換券やプリペイドカードの発行対価」で

「商品引換券等の発行代金が発行時において発行者の確定的な収入になると解することに会計理論上特段の問題はなく(この場合、期末において引換え未了の部分については引換費用の見積計上を認める必要があるが、これについては別途基本通達2-2-11に取扱いが定められている。)、」

とありますが、会計理論上問題です。

本来であれば、

「会計理論上問題ではあるが、重要性の観点等から商品引換券等の発行代金が発行時において発行者の確定的な収入としても認められる・・・」

とならないといけません。

 

まあ、法人税法では、「一般に公正妥当と認められる会計処理」について、「課税の公平性」という観点を勝手に入れてしまう裁判例があるので、何とも言えませんが。。。

 

本来は、税法に特段規定がなければ。会計理論上の「一般に公正妥当と認められる会計処理」すれば税務上も認めるべきです。租税立法主義なのですから。。。

 

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