税務調査は拒否できるのか (最高裁昭和48年7月10日判決の一部)
よく税理士の方が
「税務調査は、任意調査であるから拒否しても構わない。」
と説明することがよくあります。
国税通則法第74条の2には
「国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)若しくは輸出物品(同法第八条第一項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。第四号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。」
となっています。
簡単にすると
「税務署等は、税務調査について必要があるときは、納税者に質問、帳簿書類等を検査し、書類等の提示若しくは提出を求めることができる。」
となります。
この条文だけ見ると確かに「~求めることができる。」となっているので、
「税務署が求めることができるだけで納税者は断ることもできる。」
とも考えられます。
しかし、国税通則法第128条には
「次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者」
という条文があり、簡単にすると
「税務調査において、正当な理由がなくて拒否したり、うその説明等をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
となります。
つまり、税務調査は任意と言っても、それについて、拒否やうその説明等をした場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられることになります。
最高裁の判断としては
「所得税法234条1項、242条8号の規定が不当な拡大解釈と濫用の可能性を有する条項であり、質問検査に対する不協力がすべて所定の重刑の対象とされていることは不合理であるとして右規定の違憲(31条)をいうが、右規定の不当解釈と濫用を招来すべき危険性が右規定上明白に存するものとは認めがたく、また、質問検査制度の趣旨目的にてらし、同法242条所定の刑が著しく不合理、不均衡であるとも認められない。
質問検査に応ずるか否かを相手方の自由に委ねる一方においてその拒否を処罰することとしているのは不合理であるとし、所得税法の前記規定の違憲(31条)をいう点は、前記規定に基づく質問検査に対しては相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負い、その履行を間接的心理的に強制されているものであって、ただ、相手方においてあえて質問検査を受忍しない場合にはそれ以上直接的物理的に右義務の履行を強制しえないという関係を称して一般に「任意調査」と表現されているだけのことであり、この間なんら実質上の不合理性は存しない。」
となっています。
簡単にすると
「納税者は税務調査を受ける義務がある。任意調査とは、納税者が税務調査を拒否等した場合には税務署がそれ以上の税務調査はできないということをいう。質問検査制度の目的にてらし、刑が著しく不合理、不均衡であるとも認められない。」
となります。
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