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中古マンションを購入したときに支払った消費税の全額控除できなかったニュース

このニュースについては、だいぶ、時間がたってしまいました(2023年3月6日判決 珍しく忙しくタイムリーにコメントできませんでした)が、中古マンションにかんする消費税と言った時に、ピンとくる人は、それほどいらっしゃらないと思います。

 

まず、前提として、

・令和2年9月前の消費税法のことです。

(令和2年10月以降は、消費税法が変わって、この判決の事例は生じなくなりました。)

・この事例で購入した中古マンションは、居住用(人が住むため)の賃貸マンションで、購入時には賃貸で借りている人がいました。

・購入した会社は、購入物件の価値を挙げて、転売することを目的として購入しました。

・2023年3月27日現在も変わりがないのですが、消費税の取り扱いとして、居住用の収入に対しては、政策的に消費税がかかりません(これを非課税売上と言います。)。一方、事業用の賃貸は消費税がかかります。

・消費税は、通常、貰った消費税から支払った消費税を差し引いて、税務署に納めます。

簡単な例として、

本体価額が90円のものを仕入、消費税を含め99円を支払、

それを

本体価額を100円で売り、消費税を含め110円を貰った場合、

本体価額90円で仕入れたものを100円で売っているので利益は10円

消費税は10円を貰って、9円を仕入れ業者に支払っているので、1円を税務署に納めます。

消費税のない世界では、

90円で仕入れ、100円で売っているので、10円が手元に10円が残ります。

消費税のある世界では、

99円を支払って、110円で売って、一旦は11円が手元に残りますが、1円を税務署に消費税として納めるので、結果、10円が手元に残ります。

まあ、消費税があろうがなかろうが、手元には10円が残ることになります。

・さて、ここで難しいのが、居住用の賃貸の場合の消費税の取り扱いです。居住用の賃貸の場合、消費税はかかりません(非課税売上)と言いましたが、支払った消費税について、非課税売上に対応する部分を差し引くことができないと消費税法上なっています。(この部分は、おかしいと思っています。これは、今後、いつか記載したいと思います。)

 

この裁判では、この非課税売上の取り扱いで最高裁まで行きました。

 

国税庁は、当初、購入する物件に居住用の賃貸があろうがなかろうが、購入目的が、転売目的であれば、非課税売上(居住用の収入)があっても、購入したときに支払った消費税を、全額控除していいとしていました。

ただ、途中から、方針を変えて、購入時に非課税売上(居住用の収入)がある場合には、全額を控除してはダメと変わりました。

 

裁判では、この部分が争いになり、結果、納税者は敗訴しました。

 

消費税法の考え方(条文にありません)からすると、

・転売目的の新築物件、中古物件でも居住用の賃貸がない物件の場合、購入後、居住用の賃貸が生じても購入した時に支払った消費税を全額控除できる。

・居住用の賃貸がある中古物件を購入した場合には、転売目的でも、購入直後に非課税売上(居住用の収入)が発生するのであるから、購入したときに支払った消費税は全額控除できない

となると思います(あくまでも個人的見解です)。

 

そもそも、国税庁の当初の判断が誤っていたものであり、消費税が消費税法に基づかない、通達や国税庁の見解で決まる租税法律主義に反していると税金と言われるところです。

 

消費税の取り扱いは、理論的におかしいことが多々あり、また、税理士も、消費税法の改正や国税庁の見解に振り回されて、正しく理解しようとしないことが多いです。

(先日、租税訴訟の事例研修(消費税に関するもの)で補佐人になった方の講義を受けましたが、私には、そもそも、消費税や所得税をきちんと理解していないから、間違えた申告をしてしまったのであり、訴訟をしても無理な事案だと思いました。)

 

消費税は、気をつけましょうね。

 

 

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