延滞税が余計にとられているかも
税務調査で、重加算が課せられることもありますが、その時に、税務署職員から
「重加算に該当するので延滞税がすべての期間にかかります。」
と言われることがあり、また、顧問税理士も、ほとんど、そのままこのことを受け入れています。
延滞税は、
税金の納付が納付期限までに納付できなかった場合、法定納付期限から実際に納付するまでにかかる税金
で、税金を納付しなかったことに対しての利息に相当する税金です。
この延滞税には、法定納付期限から実際に納付するまでの期間から控除できる期間があります。
国税通則法第61条には
「修正申告書(偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた納税者が当該国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知して提出した当該申告書(次項において「特定修正申告書」という。)を除く。)の提出又は更正(偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた納税者についてされた当該国税に係る更正(同項において「特定更正」という。)を除く。)があつた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、当該申告書の提出又は更正により納付すべき国税については、前条第二項に規定する期間から当該各号に定める期間を控除して、同項の規定を適用する。
一 その申告又は更正に係る国税について期限内申告書が提出されている場合において、その法定申告期限から一年を経過する日後に当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられたとき その法定申告期限から一年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間
二 その申告又は更正に係る国税について期限後申告書(還付金の還付を受けるための納税申告書で政令で定めるもの(以下「還付請求申告書」という。)を含む。以下この号及び次項において同じ。)が提出されている場合において、その期限後申告書の提出があつた日の翌日から起算して一年を経過する日後に当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられたとき その期限後申告書の提出があつた日の翌日から起算して一年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間」
とあります。
簡単に言うと
「偽りその他不正の行為」があった場合はダメですが、「偽りその他不正の行為」がなかった場合には、延滞税は1年分だけでいいですよ
ということになります。
ここで、重要となるのが、「偽りその他不正の行為」です。
重加算の要件は、法律上
「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実」
「全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」
であって、「偽りその他不正の行為」ではありません。
「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実」
「全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」
と
「偽りその他不正の行為」
が、同一もしくは、「偽りその他不正の行為」の概念が広く重加算の要件をすべて包括するのであれば、
「重加算に該当するので延滞税がすべての期間にかかります。」
は問題ありません。
しかし、果たしてそうでしょうか。
法律は、文言が違えば、当然、その意味も違ってきます。
「偽りその他不正の行為」とは、
「逋脱の意図をもつて、その手段として税の賦課徴収を不能もしくは著しく困難ならしめるようななんらかの偽計その他の工作を行なうことをいうものと解するのを相当とする。」最高裁判決昭和42年11月8日)
と判例上なっています。
簡単に言うと
「脱税の意思をもって、課税できなくしたり、または、課税することを著しく困難な状況にしたりするような行為」
になります。
なお、上記判例は「偽りその他不正の行為」は刑事罰に関してのことであり、国税通則法にある「偽りその他不正の行為」には、脱税の意思は必要ないとする説もあります、しかし、財務省管轄の法律で同じ文言である「偽りその他不正の行為」が違っているとするのは、あまりにも飛躍しすぎていると思いますし、もし、違っているのであれば、きちんと言葉の定義をしていると思います。
したがって、ある税務否認事項について、重加算に該当するが「偽りその他不正の行為」に該当しないということもありますし、逆に、「偽りその他不正の行為」に該当するが重加算に該当しないということもあります。
例えば、従業員が予算消化のために、翌期の経費を意図して当期の経費に入れてしまったとした場合、重加算に該当することになります。
「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実」・・・翌期の経費を当期の経費とした事実
「全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」・・・意図して当期の経費として仮装した
しかし、脱税の意思を持っていないので、延滞税の計算では1年だけでいいはずです。
重加算に該当したとしても、どのようなことで税務否認されたのかをきちんと理解した上で、延滞税の期間の計算上、すべての期間について延滞税を支払わなくてはいけないのか、1年でいいのか検討することが必要です。
もし、「偽りその他不正の行為」でないと思ったのならば、重加算のどの部分が「偽りその他不正の行為」なのかをきちんと税務職員に確認して、納得してから延滞税の支払をすることが必要です。
なお、国税庁のHPの「延滞税の計算方法」には
「期限内申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。
また、期限後申告書の提出後1年以上経過して修正申告又は更正があった場合(重加算税が課された場合を除く。)には、その申告書提出後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日又は更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間から控除されます。」
と勝手に法律上の「偽りその他不正の行為」を「重加算税」と言い換えていますので、注意が必要です。
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