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タックスヘイブン課税事案における適用除外要件の重要性!-意識しよう、適用除外要件に関する事実確認- 014 (平成20年1月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 東京高裁平成19年11月1日判決(国側勝訴・■■■■)>

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平成19年11月、東京高裁第16民事部で、タックスヘイブン課税事案に関する「政策目的税制の限定解釈」論を含めた争点について判決が下されました。

タックスヘイブン税制(措置法66条の6)の趣旨目的から、同税制を適用するには、「軽課税国にある子会社等で我が国株主により支配されているようなものに我が国株主が所得を留保し、我が国での税負担を不当に軽減すること」を目的とする租税回避行為があることと、その租税回避行為に「異常な法形式が用いられていること」が必要であるとの控訴人の主張に対し、裁判所は、タックスヘイブン税制が「税負担の不当な軽減を図る目的により、異常な法形式を用いた租税回避行為が存在すること」といった要件まで要求していないことは、条文の文言上明らかであると判示し、その主張を退けました。

判決を一つの機会として、各調査担当者がタックスヘイブン課税事案における適用除外要件に関する事実確認の重要性を再認識していただくことを期待して発信するものです。

▼ 「政策目的税制の限定解釈」論とは

「政策目的税制の限定解釈」論とは、最高裁の外国税額控除判決を引用し、政策目的税制の濫用の場合には、租税法規について限定解釈すべきであるとする著名な租税法学者の主張です。

これを具体的にタックスヘイブン税制に当てはめてみると、「タックスヘイブン税制の趣旨・目的からいうと、租税回避が存在しない場合には、租税回避否認のための制度であるタックスヘイブン税制を適用する必要はなく、同税制の射程外のものであるとすべきである。」という主張となります。

▼ 適用除外要件の重要性  

以下、黒塗りで不明

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この判決では、

「税負担の不当な軽減を図る目的により、異常な法形式を用いた租税回避行為が存在すること」といった要件まで要求していないことは、条文の文言上明らかである

として、納税者が負けています。

 

しかし、タックスヘイブン税制が制度化された趣旨としては

租税の負担が著しく低い外国法人で我が国の法人又は居住者により株式等の保有を通じて支配されているとみなされるものの留保所得を我が国株主の持分に応じてその所得に加算して課税するというものである。ただし、所在地国において独立企業としての実体を備え、かつ、それぞれの業態に応じ、その地において事業活動を行うことに十分な経済合理性があると認められる海外子会社等は適用除外とされる。

であり、形式的に税法上合致したとしても、実質として「税負担の不当な軽減を図る目的により、異常な法形式を用いた租税回避行為が存在すること」が存在してなければ、制度化された趣旨から逸脱していると思いますし、課税庁がこのような情報を出して、税務職員に周知することがいいのか疑問です。

 

調査に生かす判決にしたとしても、何か、違和感が残るものです。

 

なお、タックスヘイブン税制については、この時の税法と今は違っているので何とも言えませんが、この判例情報では、黒塗りの部分が多いです。

黒塗り部分は

当該部分は、国が当事者となっている訴訟の進行状況等が記載されており、当該部分を公にすることにより、国の当事者としての地位を不当に害するおそれがあるため。

との理由としていますが、課税自体に自信があるのであれば、黒塗りの必要はないのではないでしょうか。それとも、自信がないのでしょうか。

 

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