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必要経費か、家事費か、それが問題-業務との関連がポイント- 033 (平成26年2月) その2

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 最東京地裁平成25年10月17日判決(国側一部敗訴・確定)>

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家事関連費を事業所得等の必要経費に算入するためには、

(1) 業務の遂行上必要であること

(2) その必要な部分の金額が明確に区分されていること

の二つの要件が必要

家事費と思われる支出であっても、納税者が業務に関連があると主張する可能性がある場合には、納税者にその支出の目的を確認した上で、業務との関連性の有無について聴取書等により証拠化することが必要

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この裁判例は、

1.地代家賃等

2.教育費用

3.弁護士費用

4.雑費で購入した服飾品等

が必要経費として認められるかどうか判断された事例です。

 

その2では、雑費で購入した服飾品等についてみてみたいと思います。

納税者は

各業務は、マルチ・レベル・マーケット業(個人の販売代理店を多段階に集めて営業活動を行う業態)であるから、代理店や顧客と面会する際には、芸能人並みに服装、服飾品や車両に多額の費用をかけなければ売上げが上がらない。したがって、本件雑費は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。

と主張しました。

 

裁判所は、

本件雑費で購入した服飾品等は、一般には、家事費に該当するところ、その必要性について、具体的な根拠を明らかにしていないから、各業務の遂行上、客観的に必要であるとは認め難い。

との判断がなされました。

 

裁判で納税者がどのぐらいの主張をしたのか分かりませんが、少なくとも裁判官の理解の上では、業務と服飾品等との関連性が明確でなかったもののようです。

業務の遂行上必要であることの要件を満たさなかったということになります。

 

では、服飾品等は必要経費として認められないのか。ということになるかもしれませんが、個人の見解として、服飾品等は必要経費として認められることもありうると思っています。

給与所得の話になってしまいますが、給与所得には特定支出控除という制度があり、

給与を支払社(会社等)の証明が必要となりますが、

制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)

は特定支出(必要経費的なもの)として認められいます。

 

給与所得の特定支出で衣服費が認められるのであれば、事業所得等でも服飾品等について事業等の関連性をきちんと説明できれば、服飾品等を必要経費として認められる余地は十分にあると思っております。

 

なお、事業等の関連性は、納税者本人が主張するだけでなく、一般の方が

「その事業等を行うために使うのであるということは当たり前ではないか」

とわかりやすい説明ができなければなりません。

税務署職員、税務訴訟まで行けば裁判官が「なるほど!当たり前だよね。」と思う理由が必要です。