必要経費か、家事費か、それが問題-業務との関連がポイント- 033 (平成26年2月) その1
東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。
すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。
納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。
<参考判決 最東京地裁平成25年10月17日判決(国側一部敗訴・確定)>
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家事関連費を事業所得等の必要経費に算入するためには、
(1) 業務の遂行上必要であること
(2) その必要な部分の金額が明確に区分されていること
の二つの要件が必要
家事費と思われる支出であっても、納税者が業務に関連があると主張する可能性がある場合には、納税者にその支出の目的を確認した上で、業務との関連性の有無について聴取書等により証拠化することが必要
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この裁判例は、
1.地代家賃等
2.教育費用
3.弁護士費用
4.雑費で購入した服飾品等
が必要経費として認められるかどうか判断された事例です。
その1では、地代家賃等についてみてみたいと思います。
納税者は
住宅のうち、業務に使用する場所は明確に区分され、1階のリビングルームは、ビジネス専用の集会場であり、毎日、会議、食事会や、パーティー・ミーティングのために使用しており、時間的にも家族団らんの場所として使用することは不可能である。また、2階の事務所スペースは、事務作業及び個別の打合せをするためのものであり、寝室として使用するのは年に1、2回しかない。事業用として使用している割合は、60%が相当であるから、その割合に相当する金額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。
と主張しました。
裁判所は、
住宅は、全体として居住の用に供されるべき3LDKの2階建て住宅であり、その構造上、居住用部分と事業用部分とを明確に区分することができる状態にないことが明らかであり、家族と共に住宅に居住していることを併せて考えると、リビング等を各業務の専用スペースとして常時使用し、それ以外の用向きには使用していなかったとは考えられず、むしろ、居宅である住宅において、家族と共に家庭生活を営みつつ、各業務に関連する業務などを行っていたものと認めるのが相当である。
したがって、地代家賃等のうち各業務の遂行上必要な部分を明確に区分することができないから、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。
との判断がなされました。
地代家賃等については、
その必要な部分の金額が明確に区分されていること
の要件を満たさないことが多いと思います。少なくとも生活の範囲外の部屋については認められると思いますが、家族と生活をしている部屋については必要経費とすることは難しいと思います。