青色事業専従者の要件-弁護士業を営む納税者の配偶者が主に自宅で当該業務の補助を行っていた場合、その配偶者は青色事業専従者に該当する? 026 (平成23年11月)
東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。
すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。
納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。
<参考判決 東京高裁平成22年10月20日判決(納税者の控訴を棄却・確定)>
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所得税法57条1項所定の「専ら…事業に従事するもの」の意義及びその判断基準
青色事業専従者給与に関する届出書が提出されていたとしても、届出書に記載されている青色事業専従者が専ら当該居住者の営む事業に従事する実態があると認められなければ、青色事業専従者給与の適用はなく、また、その実態があるといえるかどうかの基準については、一義的・画一的基準を設けることはできず、当該事案において、当該居住者の営む事業の事業形態、当該親族が従事している具体的労務内容やその事務量等を総合勘案し、社会通念に従って判断するほかはない。
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同生計の配偶者等が従業員等として納税者のところで働いていた場合、給与を支払うことがあります。しかし、所得税法上は原則必要経費になりません。
しかし、青色申告の場合には、一定の要件及び届を税務署に提出すると必要経費として認められ、また、白色申告の場合には、一定の要件を満たせば、一定の上限額まで必要経費として認められます。
青色申告の要件の中に、従業員としては働いている配偶者が「専ら…事業に従事するもの」に該当するかどうかで争いになりました。
結論としては、納税者の配偶者は「専ら…事業に従事するもの」に該当しないとして敗訴してしまいました。
裁判所は、どの程度事業に従事していると「専ら…事業に従事するもの」かどうか具体的は判断基準を示していませんが、
納税者が営む業種・業態、配偶者が従事している具体的労務内容やその事務量等を総合勘案し、社会通念に従って判断するよりほかない。
としています。
結局は、他の従業員と同等の仕事をしなければ、配偶者の給与は認められないのかもしれません。