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横領行為による代表取締役への経済的利益の移転は役員賞与に該当する-代表取締役への横領行為と給与認定との関係- 018 (平成20年12月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 東京地裁平成19年12月20日判決(納税者の請求棄却・確定)>

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▼ 代表取締役の行為

株式会社の代表取締役は、会社の業務執行機関であり、会社の営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為について、包括的な代表権を有する者であるから、取引行為に伴い会社から経済的な利益が移転した場合、それは代表取締役の業務執行行為として行われた会社の行為とみるほかない。

▼ 代表取締役の代表権

代表取締役の包括的代表権からすれば、法人代表者の意思に基づく限り、権限濫用又は内部制限の逸脱があったとしても、法人の意思に基づく行為とみることを妨げるものではない。

すなわち、客観的に当該行為が会社の営業に関する行為であれば、例え主観的に個人の利得目的があったとしても、また、仮に内部的な制限に反していた場合であっても、代表権を完全に否定されることはない。

▼ 代表取締役への給与に該当するか否かの判断基準

給与に該当するか否かについては、法人から個人への金員の移転や特定の個人が法人から利益を得た場合に、その金員の移転や利益の取得が、職務執行の対価に準ずる性質を有するかどうかといった事情や法人における地位に基づいて支給されたものかどうかといった点をあわせ考慮して判断する。

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会社の代表取締役が会社のお金を使ってしまうことや取引先と共謀してキックバック等、不正が発生することがあります。

この場合、代表取締役の行為は会社の行為であるとして見られてしまうので、注意が必要です。

また、代表取締役でなくても、経営に参加している取締役等であれば代表取締役と同等と看做されることもありますので注意してください。

 

代表取締役等の不正が発生した場合、法人税及び所得税はどのように取り扱われるのでしょうか。

例えば、代表取締役等が会社のお金を使ってしまった場合には、税務署側は、法人税(会社側)では役員賞与で損金不算入、所得税代表取締役等)では給与所得として課税していこうとします。

 

しかし、これでは、法人税所得税ともに納税が発生してしまいます。交渉とはなりますが、会社側は貸付(仮払金)、代表取締役等は会社から借入として処理できれば納税は発生しません。金額にはよりますが、代表取締役等がすぐ返済できるのであれば、この主張もありうるのではないでしょうか。

 

この「調査に生かす判決情報」では、給与としか説明していませんが、会社からの支出がすべて給与になるとは、あまりにも、言い過ぎではないでしょうか。

(逆に、すべてを会社からの貸付というのも言い過ぎでしょう。)

 

少なくとも、金額によっては、会社からの貸付(仮払)と主張することもありうるのではないでしょか。

 

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