税務調査は怖くない

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所得税法上の納税地とは-「調査がいやだから納税地かえます」!!-(納税地の変更届出書を提出すれば納税地は変わるの?) 027 (平成24年3月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 最高裁平成23年9月8日決定(原審:東京高裁平成23年3月16日判決・国側勝訴)>

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住所のほか居所を有する者が、住所地に代えてその居所地を納税地とする場合には、所定の事項を記載した書類を所定の提出先に提出することを要するものとし、当該書類の提出のあった場合は提出のあった日以後に居所地が納税地になることを定めているが、この規定は、変更後の納税地やその変更の時期が不明確になる事態を避けるため、居所地を納税地とするための手続を定めた規定にすぎない。したがって、同条3項によって、居所地でない地を納税地として届け出たとしても、当該届出地が納税地になるという実体的な効果が生ずるものでなく、納税地の居所地への変更の届出の効力が生ずるためには、当該届出に係る居所地が実体的にも当該納税義務者の居所地として認められなければならない。

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所得税法では、納税地は、原則、「住所地」もしくは「居所地」となります。しかし、事業所等があった場合、「住所地」、「居所地」ではなく、事業所等を納税地とすることができます。

 

この事例は、納税者が税務調査を受けたくないために、点々と納税地を変更していった事例です。

 

判例では、所得税(個人)の納税地は

「住所のほか居所を有する者が、住所地に代えてその居所地を納税地とする場合には、所定の事項を記載した書類を所定の提出先に提出することを要するものとし、当該書類の提出のあった場合は提出のあった日以後に納税地が居所地になることを定めているが、この規定は、変更後の納税地やその変更の時期が不明確になる事態を避けるため、居所地を納税地とするための手続を定めた規定にすぎない。」

としています。そのことから

「居所地でない地を納税地として届けたとしても、当該届出地が納税地になるという実体的な効果が生ずるものでなく、納税地の居所地への変更の届出の効力が生ずるためには、当該届出に係る居所地が実体的にも当該納税義務者の居所地として認められなければならない。」

 

簡単に言うと

納税地は、単に納税者及び税務署の事務手続がやり易いように定めた場所で、形式的に納税地を異動しても実体がなければ認めない。

ということになります。

 

税務調査は、確かに面倒でできれば避けたいと思うこともあるかと思いますが、健康診断と思って悪いところを見つけてもらおうと思ったり、また、税務署職員は、色々な個人、法人に税務調査で見ています。個別の話はできませんが、一般的な業界の状況等を生の情報として聞くことができると前向きに考えて、税務調査を受けるといいと思います。

 

なお、この事例は所得税の事例となっています。法人税については、令和3年度において税務調査が着手された場合には、異動前の税務署が税務調査を行うことができるよう改正されております。