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証拠収集の重要性(その3)-聴取書作成のポイント- 010 (平成18年12月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 特になし>

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調査の必要に応じて積極的に聴取書を作成しましょう。

▼ 聴取書作成の目的 = 聴取内容の証拠化

納税者本人やその関係者から様々な聴取を行うことは、税務職員の主要な調査活動の一つです。「聴取書」は、税務職員が納税者などから聴取した内容を記録した書面であり、訴訟の証拠とする場合には、真正に成立したものと推定される公文書です(民事訴訟法228②)。

▼ 聴取書の活用 = 最終的には裁判所に提出される証拠となり得ること

課税処分取消訴訟の場合、課税処分の適法性を立証するために、国側は多数の調査資料を証拠として裁判所に提出することになりますが、その提出する調査資料の一つに、原処分段階で税務職員が作成した聴取書が含まれることが少なくありません。すなわち、聴取書は、最終的に訴訟上の証拠として活用され、裁判官の判断の材料とされる場合があることを念頭に置いて作成する必要があります。

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東京国税局は、税務署に対して、「積極的に聴取書を作成しましょう」と聴取書を作成するように指導しています。

また、この回の「調査に生かす判決情報」では、不開示とした部分が多くあり、その理由として、

「当該部分には、「聴取書」作成の機能、活用方法及び記録するに際しての形式又は内容に関する留意事項が記載されており、これを公にすることにより、証拠の収集・保全を目的に当局が行う資料調査の具体的手法に係る部分が明らかになり、当局の争訟に関する事務に関し、立証に必要な証拠の正確な把握を困難にするとともに、当事者としての地位を不当に害するすおそれがあるため。」

と非常に神経質になっています。

 

このことから考えると、税務職員が作成する聴取書の重要性は非常に高いと思います。

聴取書の目的として

(1) 裁判所への書証としての提出

調査担当者が作成した聴取書は、基本的に課税処分の適法性を立証すべき証拠の一つとなります。証拠を裁判所に提出する場合には、証拠の原本について写しを取り、その写しを裁判所と訴訟の相手側(納税者である原告)に交付するのですが、その交付された写しが間違いなく原本の写しであるかどうか、口頭弁論期日の場(法廷)で、裁判官と相手側は原本との照合を行います。

(2) 聴取書を証拠として裁判所に提出した場合の効果と影響

ア 効果

上記(1)のような手続きを経て、聴取書が裁判所に提出されると、その聴取書は、国側の主張を裏付ける証拠の一つとして、裁判官の判断の材料とされますが、自由心証主義(民事所訟法247)の下における民事訴訟においては、その証拠の採否やその証拠をどの程度信用するかは、裁判官の自由な裁量に委ねられています。

イ 影響

課税処分取消訴訟において、聴取書が裁判所に提出されると、その聴取書は、税務職員が納税者などから聴取した内容を記録した公文書であって、民事訴訟法上その文書は真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228②)。しかし、この文書の真正の成立は形式的証拠力といわれ、文書を作成した者がその文書を作成したことは推定されるものの、その文書の記載内容についてまでも、真正なものと推定されるわけではありません。

があげられています。

聴取書の「記載内容についてまでも、真正なものと推定されるわけではありません。」と言っていますが、しかし、裁判では、納税者側で税務署の聴取書に代わるようなものがなければ、税務署が作成した聴取書が真実であるとされることがほとんどです。

 

税務調査で税務署と意見が相違しない場合であればいいのですが、税務署の否認事項に納得できないのであれば、不服審判所や裁判までを見越して、税務署側の聴取書と対抗できる税務調査メモなどを納税者も作成しておくことが必要となります。

 

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