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亡くなった方の預金の不明出金が相続財産か否か (令和3年6月24日裁決の一部)

亡くなった方が亡くなる前に病気等で預金等の管理ができなくなるケースは多々あります。この場合、預金等の管理を任された方が誠実に行っているのであれば問題は起きませんが、亡くなった方の預金を自分の預金等として使ってしまうこともあり、相続で争いが生じることがあります。

相続税では、このような亡くなった方の預金等を自分の預金等として使ってしまった場合、それを相続財産の一部と看做されることがあります。

実際には預金等は使われてしまって残っていないのですが、それに対して相続税が課せられることになり、相続税の納税が非常に大変になります。

 

(状況)

Aさんは平成29年7月○日に死亡し、その相続開始した。

Aさんは相続の開始時において預貯金があり、平成16年12月22日からAさんが亡くなる時までに、合計〇〇〇〇円の現金が出金されていた。

遅くとも平成24年頃から各出金の手続の大半は、Aさんの相続人となるBさん及びBさんの配偶者のCさんが行っていた。

平成17年1月5日から平成29年6月19日までの間に、BさんやCさんをはじめとしたBさん一家の預金口座にAさんの預金口座から出金された現金を原資とする合計62,440,516円が入金された。

この入金額について、AさんとBさんとの間に贈与等、その所有権をAさんからBさんに移転する旨の契約が存在しない。

 

(税務署の主張)

この入金額について、

1.Aさんは、BさんがAさん名義の通帳及び印章の管理・保管することを了解していたこと

2.Aさんが他人に贈与をする際は、その贈与の意思を明確にしていたこと

3.Aさんは、BさんがAさんの口座から出金した現金を使用していたことを知っていたこと

4.Bさんは、この入金額が相続に係る財産になることを強く認識していたこと

などからすれば、Aさんは、Bさんへこの入金額に相当する額を寄託(又は消費寄託)していることとなるから、Aさんにとってはこの入金額に相当する額の金銭の返還請求権(債権)を有していたととなる。

仮に、Bさんが、Aさんの承諾を得ることなく、この入金額を取得していたとしても、Bさんは、法律の原因なくこの入金額を利得したこととなるから、Aさんにとってはこの入金額に相当する額の金銭の返還請求権(債権)を有していたこととなる。

いずれの場合においても、Bさんに対するこの入金額に相当する額の金銭の返還請求権(債権)を有しているのであるから、この入金額(に相当する債権)を相続財産となる。

 

(納税者の主張)

この入金額について、Bさんは自己の生活費等に費消しており、また、AさんとBさんとの間に贈与契約が存在しないのであるから、Bさんはこの入金額を横領したもので、これは民法上、Bさんの不当利得に当たる。

そうすると、Aさんは、民法上、この入金額に相当する額の返還請求権(債権)を有していることとなるが、税法上、Bさんは、経済的利益を享受しているから、不当利得であるこの入金額は、税法上は、相続税法第9条のいわゆる「みなし贈与」になる。

したがって、税法上、預け金(相当額の金銭債権)は相続財産とはならない。

 

(不服審判所の判断)

この入金額については、Aさんの口座から出金された現金が原資であること、AさんとBさんとの間に贈与等、その所有権をAさんからBに移転する旨の契約が存在しないに争いはない。このような事実関係を前提とすれば、この入金額の法的な性質にかかわらず、少なくともAさんは、相続の開始時において、Bさんに対して、この入金額に相当する額の金銭債権を有していたと認められる。

この入金額は預け金(債権)として相続財産に該当する。

納税者からは、この入金額は民法上、Bさんの不当利得にあたり、Bさんが経済的利益を享受していたことから、税法上は、相続税法第9条のいわゆる「みなし贈与」に当たるとしているが、しかし、相続税法第9条は、贈与契約の履行により取得したものとはいえないが、関係する者の間の事情に照らし、実質的にみて、贈与があったのと同様の経済的利益の移転の事実がある場合に、租税回避行為を防止するため、税負担の公平の見地から、贈与税を課税することとしたもので、贈与があったのと同様の経済的利益の移転の事実がある場合に適用される規定である。

今回においては、Aさんは、相続の開始時において、Bさんに対して、入金額に相当する額の金銭債権を有していた。これを裏返せば、Bさんは相続の開始時において、Aさんに対して、入金額に相当する額の金銭債務を負っていたと認められるから、実質的に贈与があったのと同様の経済的利益の移転の事実があったとは認められず、相続税法第9条の規定には該当しない。

 

(日々でやるべきこととは)

そもそも、誠実でない方が預金等の管理を行うことが相続税をはじめとした相続のリスクとなります。預金等の管理は一人の方に任せるにしても、年に1度は入出金等の状況を確認することが必要です。

預金等の管理を任せた方に入出金の確認をさせてほしいということを言うのは、言われた方からすると「信用していないのか」と感じてしまうかもしれないから非常に難しいのかもしれません。

しかし、お互いに確認し合うことで相続のリスクを減らすことができることですので、誠実な方であれば、預金等の入出金の確認を嫌がることは少ないかと思います。

確認させないという方に管理を任せるのは、相続のリスクが高くなりますのでご注意ください。

 

裁決

(令和3年6月24日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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