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中古資産の見積法等の耐用年数の適用のタイミング (平成25年12月17日裁決の一部)

固定資産を取得するときに、既に使用されている中古の資産を取得する場合があります。

固定資産の減価償却費を計算するときには、その資産がどのぐらいの期間、使用できるかを加味した耐用年数で計算します。

税法上、法定耐用年数が定められていますが、この法定耐用年数は、新品で使用したときにどのぐらいの期間使用できるかで見積もられています。したがって、中古で取得して資産の場合には、実際に使用できる期間よりも法定耐用年数が長くなってしまうケースが生じることもあります。

そのため、税法上、中古で取得した資産については、法定耐用年数ではなく、見積法等で算定した耐用年数を使うことができます。

 

(状況)

A社は、平成23年3月期以前の各建物の減価償却費の償却限度額の計算について一律法定耐用年数を適用していた。

A社の平成17年4月1日に開始する事業年度から平成23年3月期までの各事業年度の法人税の確定申告書に添付されている「資産別固定資産減価償却内訳表」の「耐用年数」欄、「当期償却限度額」欄及び「償却累計額」欄によれば、A社は、各中古建物を取得して事業の用に供した日の属する事業年度以降平成23年3月期までの各事業年度において、法定耐用年数で減価償却費の償却限度額の計算を行い、当該金額を損金の額に算入し、法人税の確定申告をした。

A社は、平成24年3月期以降、各中古建物の耐用年数を変更して減価償却費の償却限度額の計算を行って、これらの償却限度額の金額を各事業年度の損金の額に算入して申告した。

 

(税務署の主張)

減価償却資産の耐用年数は、原則として法定耐用年数によることとされているが、中古資産の耐用年数については、見積法等を適用して算定することができることとされているところ、見積法等を適用して算定できるのは、中古資産を取得して法人の事業の用に供した日の属する事業年度に限られることは耐用年数省令の規定上明らかである。

そうすると、A社が各中古建物を取得して事業の用に供した日の属する事業年度において適用した耐用年数がA社の主張どおり見積法を適用して算定していなかったものとすれば、各中古建物を取得して事業の用に供した日の属する事業年度から法定耐用年数が適用され、法人税額が各更正処分の額を上回ることとなるから、A社の主張はいずれも理由がない。

 

(納税者の主張)

A社は、平成23年3月期以前の各中古建物の耐用年数について法定耐用年数を適用していた誤りに気付いたので、平成24年3月期の確定申告において、各中古建物が事業用として使用できる期間を見積法等により実態に即した耐用年数を算定し、適用したのであるから、平成24年3月期に損金の額に算入した各中古建物に係る減価償却費の額は認められるべきである。

通達において、通達の具体的な運用に当たっては、「社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」とある。この考え方は法令を解釈する場合も同じであるから、中古建物に適用すべき耐用年数について、誤って法定耐用年数を適用していた場合、その誤りに気付いた時点において是正できないという解釈は、社会通念等に即さないものである。

税務署は、更正処分をする際は、所得金額が増額する要因だけではなく、所得金額が減額する要因も併せて見直すべきであるから、新築建物の耐用年数を遡って是正する以上、各中古建物の耐用年数についても、A社が平成24年3月期に事業用として使用できる期間を実態に即して見直した耐用年数を遡って適用し、減価償却費の償却限度額を計算し直すべきである。

これらの主張は、法人税法の根幹である、実質(本当の内容)で課税すべきであるとする法人税法規定の趣旨(実質所得者課税の原則)にも合致する。

 

(不服審判所の判断)

建物等の減価償却資産の耐用年数については、法定耐用年数によることを原則とし、その特則として、中古資産については、耐用年数省令において、中古資産を取得してこれを事業の用に供した場合における当該資産の耐用年数は、法定耐用年数によらずに見積法等による耐用年数によることができる旨規定している。

耐用年数取扱通達は、中古資産についての見積法等による耐用年数の算定は、当該中古資産を取得してこれを事業の用に供した最初の事業年度に限りすることができ、当該事業年度において算定をしなかったときは、その後の事業年度において算定することはできない旨定めているところ、見積法等は飽くまでも法定耐用年数の特則であること、そして、いつでも変更が可能であるとすると利益調整等のために納税者によって恣意的に変更される可能性があることを併せ考えると、特則である見積法等の適用を望む法人は、当該中古資産を事業の用に供した最初の事業年度において、自らその意思を表示してその適用を受けることを要し、その意思を表示しなかった場合には、原則どおり法定耐用年数が適用され、これを事後的に変更することは許されないとするのが相当である。

A社は、各中古建物の耐用年数について、その用途に関係なく、一律に法定耐用年数を適用して減価償却費の償却限度額の計算を行い、法人税の確定申告をしていたものと認められる

そうすると、中古資産についての見積法等による耐用年数の算定は、当該中古資産を取得してこれを事業の用に供した最初の事業年度に限りすることができ、当該事業年度において算定をしなかったときは、その後の事業年度において算定することはできないのであるから、各中古建物の耐用年数は、原則どおり法定耐用年数を適用することとなり、各中古建物を取得して事業の用に供した日の属する各事業年度に適用した耐用年数を、当該事業年度後の事業年度において、見積法等を用いて変更することはできない。

A社「社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい」とする通達の運用の考え方は、法令を解釈する際も同様であるから、中古建物に適用すべき耐用年数について、誤って法定耐用年数を適用していた場合、その誤りに気付いた時点において是正できないという解釈は、社会通念等に即さないものであり認められない旨主張するが、耐用年数省令に規定する中古資産を事業の用に供した場合の耐用年数の特則である見積法等の適用についてはできないのであるから、A社の主張は採用できない。

また、A社は、新築建物の耐用年数を遡って是正する以上、各中古建物についても実態に即して見直した耐用年数を遡って適用すべきである旨主張するが、各中古建物について遡って見積法等を適用することができないのであるから、この点に関するA社の主張は採用できない。

さらに、A社は、各主張は法人税法規定の趣旨にも合致する旨主張するが、実質所得者課税の原則は、資産又は事業から生ずる収益の帰属に関する通則を定めたものであって、耐用年数省令の解釈に関し法人税法の規定の趣旨を考慮する余地はないから、A社の主張はその前提を欠き採用できない。

 

(日々でやるべきこととは)

固定資産を購入等した時には、新品なのか中古なのか確認するととともに、中古であるならば、いつ新品として、製作、販売等されたかも合わせて確認して、中古耐用年数を計算し、その中古耐用年数で減価償却費の計算をすることが必要です。

 

 

裁決

(平成25年12月17日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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