税務調査は怖くない

税務調査を怖いと思っていませんか。税務調査は健康診断と同じです。普通にしていれば恐れることはありません。税金相談、税務調査の対応などを ご希望の方は wonozeimu@gmail.com までお気軽にご連絡ください。

重加算税の付加要件 (令和3年6月24日裁決の一部)

税務調査などで修正申告をした場合、追加に支払う税金の他に加算税と延滞税が課せられます。加算税は間違えて申告してしまったこと等に対してのペナルティーの意味合いのもので、延滞税は利息の意味合いのものです。

この加算税ですが、単純に誤って申告してしまった場合と意図して税金を少なくして申告した場合とで支払う加算税の金額は変わります。また、意図して税金を少なくして申告した場合の加算税(重加算税)が課せられるとそれ以降の税務署の見方が変わってきますので、重加算税が課せられないように正しい申告をすることが必要です。

 

(状況)

Aさんは、平成17年から、

1.幼稚園等から委託を受け、講師として幼児等に体操等の指導

2.体操等の教室を主催し、会員である幼児等に対する指導を自ら又は外部委託して

行っていた。

Aさんは、幼稚園等から委託の報酬を振込み又は小切手で受領していた。

Aさんは、体操等の教室の月謝収入のうち、平成26年3月以前分については、各前月末までに現金で集金しており、その都度、日計票を作成の上、「月謝出納帳」と題するルーズリーフノートに日々の人数、集金額及びその累計額を記載していた。平成26年4月以降分の月謝については、自動引き落としを利用し、自動振替により集金し、平成26年4月以降においても、現金で集金した月謝については、日計票を作成していた。また、Aさんは、毎月、月謝の支払人の名簿及び金額等に係るデータを銀行へ送信しており、残高不足等で振替不能となった月謝についても、未集金の金額等を確認の上、そのデータを銀行に送信していた。

Aさんは、月謝以外の収入として、

1.入会金、年会費、合宿等の行事参加費、昇級審査料等

2.ユニフォーム等の物販に係る収入を現金で集金しており

その都度、入会金等については日計票、ユニフォーム等については売上伝票

をそれぞれ作成していた。

Aさんは、平成26年3月以前分の月謝について、月謝出納帳に日計票から日々の集金額を記載した上、集金額の日々の累計額及び各月の合計額を記載し、訂正箇所に訂正印を押印していた。なお、当該各月の合計額は、そのほとんどが100万円を超えていた。また、平成26年4月以降分の月謝について、原則として、振込みによる受領の都度、数日以内に、受領金額のほぼ全額を出金し、別の口座に入金していた。なお、受領金額は、毎月100万円を超えていた。

月謝出納帳に記載された集金人数は、毎月150名から200名程度であり、また、月謝整理表に記載された会員数は、毎月200名を超えていた。

Aさんは、確定申告において、幼稚園等の委託の報酬の金額については、真実の金額に近似した金額を申告していた。

月謝等の金額については、真実の金額の24.3%から48.0%に相当する金額(5,700,000円から6,900,000円までの金額)に減額し、総収入金額をいずれも1,000万円を下回る金額で申告し、さらに、所得金額を真実の金額の2.8%から16.9%に相当する金額(〇〇〇〇円から〇〇〇〇円までの各金額)で申告した。

Aさんは、税務調査の連絡を受けると、確定申告の収入金額に合致する内容の資料を事後的に作成し、調査の初日に調査担当職員に提示した。また、調査の中で資料内容の矛盾点を指摘されると、更に内容虚偽の資料を作成して、調査担当職員に提示した。

 

(税務署の主張)

通帳の管理状況、月謝出納帳などの作成状況等によれば、Aさんは、真実の収入金額及び必要経費の金額を把握しており、確定申告に係る総所得金額が過少であって、真実にはそれを上回る多額の所得があることを十分認識していたと考えられる。

それにもかかわらず、7年間にもわたって、収入金額が1,000万円を超えず、かつ、所得金額が赤字にならないように収入金額等の額を調整し、極めて多額の所得を脱漏した内容虚偽の収支内訳書を作成して、それに基づき確定申告書を提出し続けた。

更に、税務調査の当初においては、月謝出納帳などを提示しないばかりか、税務調査の連絡を受けた後に作成した資料を提示の上、虚偽の回答を繰り返し、真実の収入金額等の把握が困難な状況を作出した。

このような事情によれば、Aは、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づいて過少申告をしたものと認められる。したがって、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。

 

(納税者の主張)

確定申告には、事業の収入金額等に誤りがあったものの、勘違いや集計誤りを原因とするものにすぎず、収入金額等を調整して故意に多額の所得を脱漏したことはないし、また、税務調査の際に、調査担当職員の求めに反して本件事業に係る帳簿書類を隠したこともない。

 

(不服審判所の判断)

重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合、又は、隠蔽又は仮装という不正手段を用いて法定申告期限までに申告をしなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。

しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

今回のケースでは、日計票、売上伝票、月謝出納帳及び月謝整理表の作成・保存、未集金の本件月謝に係る管理・集金、人件費の管理、給与支払明細書の作成及び人件費の支払、外注費及び園庭等の使用料の支払、入出金の管理及びその通帳の記帳をそれぞれ自ら行うなどしていたのであるから、それによって、総収入金額、必要経費及び事業所得の金額並びにその計算の基礎となる会員数を正確に把握していたと認められる。

総収入金額は、月謝に限ったとしても、ほぼ毎月100万円を超える収入があったのであるから、月謝に係る収入金額のみでさえ少なくとも1,000万円を下回らないことも十分に認識していたと認められる。

それにもかかわらず、月謝等について真実の金額の24.3%から48.0%に相当する金額に減額して、総収入金額をいずれも1,000万円を下回る金額とし、所得金額を真実の金額の2.8%から16.9%に相当する金額とする確定申告をした。

事業に係る総収入金額、必要経費及び事業所得の金額等を正確に把握していたにもかかわらず、7年間もの長期間にわたって、各年分の総収入金額を1,000万円以下に調整したところで、極めて過少な所得金額を記載した確定申告書を継続的に提出し続けたものといえる。

税務調査において、総収入金額が1,000万円を超えること及び真実の総収入金額が容易に判明する月謝出納帳等の存在を秘しただけでなく、真実の金額とは異なる確定申告の総収入金額に合致する内容虚偽の資料を事後的に作成し、税務調査担当職員に提示した上、内容の矛盾点を指摘されると、更にその内容を訂正した虚偽の書類を作成し、税務調査担当職員に提示するなどの対応をしたと認められる。

このことは、単に真実の所得金額よりも少ない所得金額を記載した確定申告書であることを認識しながらこれを提出したにとどまらず、真実の所得の調査解明に困難を伴う状況を作出し、真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、虚偽の資料を複数回作成するといった隠蔽のための具体的な工作を行い、真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしたと評価せざるを得ないものである。

したがって、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合に該当するというべきであるから、重加算税の賦課要件を満たすということができる。

Aさんは故意に多額の所得を脱漏したことはない上、質問応答記録書も、これを信用することはできないなどとして、重加算税の賦課要件を満たさないとしているが、故意に極めて過少な所得金額を記載した確定申告書を継続的に提出し続けるなどしていたと認められる。

 

(日々でやるべきこととは)

意図して違法のことを行って納税額を少なくさせることはしないこと、これ以外にありません。

税務署は反面調査等を行うことができますので、隠蔽等をしようと思っても、それはできません。正しい申告をしてください。

 

裁決

(令和2年2月19日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

・税金相談
・税務調査の対応などを
ご希望の方は
wonozeimu@gmail.com
までお気軽にご連絡ください。