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重加算税の付加要件 (令和元年11月19日裁決の一部)

税務調査などで修正申告をした場合、追加に支払う税金の他に加算税と延滞税が課せられます。加算税は間違えて申告してしまったこと等に対してのペナルティーの意味合いのもので、延滞税は利息の意味合いのものです。

この加算税ですが、単純に誤って申告してしまった場合と意図して税金を少なくして申告した場合とで支払う加算税の金額は変わります。また、意図して税金を少なくして申告した場合の加算税(重加算税)が課せられるとそれ以降の税務署の見方が変わってきますので、重加算税が課せられないように正しい申告をすることが必要です。

 

(状況)

Aさんは、平成27年4月○日に死亡し相続が開始した。相続人は、Aさんの母であるBさんのみである。

Bさんは、平成27年5月15日に銀行において、Aさん名義の預金を解約しBさん名義の口座に預け入れる相続手続をした。

Bさんは、平成27年8月10日、相続税の申告書の作成をC税理士に依頼した。

Bさんは、平成30年4月24日に税務調査を受け、Aさん名義の預金を解約しBさん名義の口座に預け入れた預金をはじめとした相続財産の申告漏れがあるとして、平成30年7月17日に修正申告書を提出した。

税務調査において、Aさん名義の預金を解約しBさん名義の口座に預け入れた預金の預金通帳は使用済通帳としてBさんから税務調査担当職員に提示された。また、この口座は解約されていなかった。

税務調査において、平成30年4月26日付で作成した調査報告書には、税務調査担当職員が本件預金について、C税理士に「基本的には、先生に見せていないということは隠ぺいととられませんか。」と問い掛けたのに対し、C税理士は「わたしにみせていないのだからそうなります。」と申述した旨の記載があった。

税務署は、平成30年8月27日付で、過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。

C税理士は、平成31年3月25日、審判所に対して、

・Bさんから通帳を提示されなかったことは事実だが、Bさんが預金を隠ぺいしたのか又は単なる提示漏れだったのかどうか、確たることは分からない。

・税務調査担当職員から受けた調査結果説明の内容をBさんに伝え、修正申告書に押印をしてもらったが、その際、Bさんに変わった様子はなく、私の話も理解していたと思う。

と答述した。

 

(税務署の主張)

Bさんは、平成27年5月15日に、預金を解約してBさん名義の口座に預け入れ、相続の開始日において預金があることを知っていたにもかかわらず、C税理士に預金の存在を伝えることなく、相続税の申告において預金をAさんの相続財産に含めなかった。このことは、事実の隠ぺい、又は仮装したところに基づいて故意に脱漏したと評価することができる。

また、税務調査はBさんの同意の下で円滑に実施されたところ、預金をC税理士に伝えなかったとする供述はC税理士の立会いの下、Bさんから任意に得られたものであり、信用性に疑いがあるものではない。

なお、預金はAさん名義であるところ、Bさんは、税務調査担当職員に対し、預金はAさんのものと考えてよい旨申述しており、加えて、預金がBさん相続人のものであるとする事実は確認されていない。

 

(納税者の主張)

Bさんは、預金を除く約○○○○円超の財産の存在をC税理士に伝えていたところ、約○○○○円の預金だけを伝えないことに利益はなく、Bさんには、本件預金を隠ぺいする意図はなかった。

 

(不服審判所の判断)

重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合、又は、隠蔽又は仮装という不正手段を用いて法定申告期限までに申告をしなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。

しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

今回のケースでは、C税理士が税務調査担当職員に対し、「わたしにみせていないのだからそうなります。」と述べているだけであって、申述時におけるJ税理士の認識を述べているに過ぎない。この申述内容からは、BさんがC税理士に対して、預金の存在を、過失により伝えなかったのか、意図的に伝えなかったのかということまでは判別できず、あえて預金の存在を伝えなかったという意図まで読み取ることは到底できない。

そして、その他の税務署から提出されている証拠や審判所に対するC税理士の答述を踏まえても、Bさんが預金の存在をC税理士に伝えなかったことは認められるとしても、必ずしもBさんが預金を相続財産であることを認識した上で、あえてこれを伝えなかったとまで認めることはできない。

また、Bさんは、預金について自ら解約手続を行い、Bさん名義の口座へ入金していた事実からすれば、Bさんが預金の存在を知っていたことは認められる。しかしながら、Bさんは、預金を税務署が容易に把握し得ないような他の金融機関やBさん名義以外の口座などに入金したのではなく、解約した預金の口座と同じ金融機関のBさん名義の口座に入金していたのである。また、Bさんは、平成27年5月15日に入金をした後、平成30年4月26日に至っても口座を解約していなかった。これらのことからすると、Bさんが税務署に対して預金の発見を困難ならしめるような意図や行動をしているとは認められない。

さらに、Bさんは、預金の預金通帳が使用済通帳として破棄できる状況にありながら、税務調査が行われるまで保管し、税務調査の際には、税務調査担当職員の求めに応じて、預金の使用済通帳を素直に提示していること、税務調査担当職員から預金を含めたAさん名義の財産の申告漏れを指摘されると、特段の弁明をすることなく当該事実を認め、修正申告の勧奨に応じて修正申告をしていることなどの事情からしても、Bさんが、預金を故意に相続税の申告の対象から除外する意図があったものとは認め難い。そして、その他税務署の関係資料及び審判所の調査の結果によっても、預金を故意に相続税の申告の対象から除外したと推認させる事実を認めるに足りる証拠はない。

これらによれば、Bさんが当初から相続財産を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできない。

そうすると、事実の隠ぺい又は仮装の行為があったとは認められない。

 

(日々でやるべきこととは)

相続財産に関するリストを作成しておくと漏れの発生を防ぐことができます。

 

(税務調査でやるべきことは)

税務調査では、調査担当官の主観によって、税務否認や重加算の認定がなされるケースがあります。単純な漏れであっても調査担当官からすると意図して相続財産から除いたのではないかと思われても仕方ありません。しかし、税務調査においては、嘘はつかず、間違えていたものは間違えていたとして修正申告等を行うことで、意図して相続財産から除いていないという主張することが必要です。

 

裁決

(令和元年11月19日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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