税務調査は怖くない

税務調査を怖いと思っていませんか。税務調査は健康診断と同じです。普通にしていれば恐れることはありません。税金相談、税務調査の対応などを ご希望の方は wonozeimu@gmail.com までお気軽にご連絡ください。

役員の不正取引・売上除外 (平成27年7月1日裁決の一部)

法人において、あってはならない売上除外などの不正取引ですが、内部統制の不備により従業員が不正取引を行ったり、経営者が行ったりすることは多々あります。

役員などの経営者が売上除外などの不正取引が行われた場合には、法人側では役員賞与として損金不算入、役員個人の所得税では給与所得として認定され、法人及び個人で課税がなされることになります(税理士の中では「往復びんた」と言われています)。

 

(状況)

A社は、農産物の生産及び販売を目的として設立された法人であり、設立日以後、取締役に就任しているBさん、Cさん及びDさんが、A社の株式を所有している。

Bさん、Cさん及びDさんは、A社のハウスをそれぞれ管理して、農産物の生産、選別及び出荷を行っている。

廃棄処分予定の農産物を販売した代金について、Bさん、Cさん及びDさんの銀行口座に入金し、A社の売上げとして計上しなかった。

A社は、売上除外についての修正申告書を税務署に提出した。なお、その修正申告では、これらの売上除外については、Bさん、Cさん及びDさんに対する貸付金として処理している。

税務署は、売上除外に関する処理は、Bさん、Cさん及びDさんに対する貸付金ではなく、役員賞与として更正処分をした。

 

(税務署の主張)

Bさん、Cさん及びDさんが、A社の売上げに係る対価である各金員を私的用途等に支出していたことは、A社から、Bさん、Cさん及びDさんに対し一定の利益が支給され、担税力を増加させたとみるのが相当であり、また、Bさん、Cさん及びDさん名義の各預金口座への振込みはBさん、Cさん及びDさんの立場を離れて全く無関係になされたものであるなどの特段の事情があるとは認められない。したがって、預金へ振込なされた金員は給与に該当する。

 

(納税者の主張)

Bさん、Cさん及びDさん名義の各預金口座に振り込まれた各金員は、Bさん、Cさん及びDさんが廃棄処分予定の農産物を販売していたものであり、廃棄予定の農産物の販売代金がA社の売上げになるという認識がなかった。また、A社は、廃棄予定の農産物の販売の事実が判明した際に、臨時株主総会を開き、これらの販売代金は、A社へ返金する旨決議した。このことからすると、各金員は、A社の意思決定の下にBさん、Cさん及びDさんへ支給されたとはいえない。したがって、各金員は、給与に該当しない。

 

(不服審判所の判断)

所得税法では、給与所得となる給与等について、「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」と包括的に規定しており、この趣旨からすると、給与等には、雇用契約に限らず、これに類する委任契約などの原因に基づき提供した労務等の対価として、あるいは労務等を提供する地位に基づいて支給されるものも含まれるものと解される。そして、法人の代表者等が法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配している事情がある場合には、法人の代表者等が、当該法人の事業活動を通じて得た利得は、給与支出の外形を有しない利得であっても、それが法人の資産から支出されたと認められる場合には、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与等であると解するのが相当である。

Bさん、Cさん及びDさんはA社の株式を保有し、Bさん、Cさん及びDさんで経営方針が決定される。また、A社の業務は、Bさん、Cさん及びDさんの判断によって、ハウスにおいて栽培、選別及び出荷された農作物の売上げによって運営されている。これらのことから、A社の業務は、Bさん、Cさん及びDさんの意思決定により運営及び管理されているといえ、Bさん、Cさん及びDさんが法人経営の実権を掌握し、法人を実質的に支配していると認められる。そして、各金員は、A社の農作物の販売に係る対価でA社に帰属すべき資産であるにもかかわらず、Bさん、Cさん及びDさんの口座に入金され、任意に処分できる状態になっていた。このことからすれば、各金員は、Bさん、Cさん及びDさんが、A社の事業活動を通じて得た利得であり、各口座に振り込まれた時点でBさん、Cさん及びDさんに帰属したといえ、当該利得は、法人の代表者等がその地位及び権限に対して受けた給与であると認められる。

A社は、臨時株主総会で、貸付金として決議したことから、各金員はBさん、Cさん及びDさんに対する給与に該当しない旨主張するが、所得税法は、納税者の認識にかかわらず、飽くまで事実として発生した経済的利益状態に着目してこれを所得として課税対象としているところ、各金員が、各口座に振り込まれた時点でBさん、Cさん及びDさんに対する給与に該当し、Bさん、Cさん及びDさんの認識の有無が判断を左右するものではない。また、たとえ経済的利益の原因となった事柄につき、事後に返還債務が発生した場合であっても、現実に経済的利益を取得した限り、その時点で給与に該当するというべきであるから、この点に関するA社の主張は採用できない。

したがって、請求人に帰属すべき各金員は、各口座に振り込まれた各年月日において、Bさん、Cさん及びDさんにそれぞれ帰属し、A社からBさん、Cさん及びDさんに対する給与として支払われたものと認められる。

 

(日々でやるべきこととは)

そもそも、不正が生じない内部統制の整備・運用、また、経営者の誠実性が求められます。不正取引はどこかで明るみに出ますので、そのような取引はしないようにすることが必要です。

 

裁決

(平成27年7月1日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

・税金相談
・税務調査の対応などを
ご希望の方は
wonozeimu@gmail.com
までお気軽にご連絡ください。