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重加算税の付加要件 (令和2年2月13日裁決の一部)

税務調査などで修正申告をした場合、追加に支払う税金の他に加算税と延滞税が課せられます。加算税は間違えて申告してしまったこと等に対してのペナルティーの意味合いのもので、延滞税は利息の意味合いのものです。

この加算税ですが、単純に誤って申告してしまった場合と意図して税金を少なくして申告した場合とで支払う加算税の金額は変わります。また、意図して税金を少なくして申告した場合の加算税(重加算税)が課せられるとそれ以降の税務署の見方が変わってきますので、重加算税が課せられないように正しい申告をすることが必要です。

 

(状況)

A社は、平成15年11月期までは税理士が作成した確定申告書を提出していたが、平成16年11月期以降の確定申告書については税務調査を受けるまで提出していなかった。

税理士は、A社から提出された書類が不十分であることを理由に平成16年11月期の法人税の税務代理を断った。そのため、それ以降税務調査に至るまで、事業に係る取引書類の整理は行っていたものの会計帳簿を作成していなかった。

A社は、平成23年から平成28年までに、複数の税理士に税務申告の依頼をしたが、すべての税理士に依頼を断られた。

平成30年8月に税務調査担当職員は、所得金額を計算するための帳簿や請求書などの書類の提示を求めたが、これらの書類を提示しなかった。その際、税務調査担当職員に対し、直近3年間ほどの期間は不明であるが、それ以前の期間については、帳簿は作成しておらず、また、請求書などの書類は全て捨てた旨申述した。

A社は、税務調査担当職員に対し、平成25年8月から平成30年7月普通預金通帳、平成26年9月から平成29年12月までの請求書(控)などの請求人の収入に関する書類並びに平成26年12月から平成30年7月までの請求書等及び平成26年6月から平成29年12月までの給料明細書などの支出に関する書類を提示した。

A社は、平成23年、平成25年及び平成26年の領収証並びに平成22年から平成26年にかけての外注支払明細書及び給料支払明細書を提示した。

 

(税務署の主張)

A社は、売上金額の入金状況などから年間の所得を容易に把握することができ、その利益が生じていたとの認識を持っていたこと、平成15年11月期以前の事業年度については法人税の確定申告を行っていたこと、税務署から申告書提出のための督促はがきを送付されていたことなどからすると、法定申告期限までに確定申告すべきこと並びに申告すべき課税標準及び納付すべき税額が生じていたことを明確に認識していたと認められ、それにもかかわらず、10年以上の長期間にわたり、一度たりとも確定申告をしなかった。

税金の計算ができないように、総勘定元帳などの帳簿を一切作成、保存しようとせず、法人の代表取締役が適正に申告しようとするならば通常行うべき行為を、長期間にわたり、全く行っていなかった。

適正な所得金額の把握を困難にさせるために、請求書のほとんどを残していたにもかかわらず、請求書などの書類を全て捨てたと税務調査担当職員に虚偽の答弁をした。

A社が申告書を法定申告期限内に提出しなかったことが、単なる不申告行為にとどまるものではなく、確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたものと認められ、課税標準等及び税額等を申告しないことによって税を免れることを意図した特段の行動と認められる。

 

(納税者の主張)

A社は、不十分ながらも領収書等の書類を整理保存していたが、会計帳簿の作成方法が分からなかったこと及び何名かの税理士に申告の相談をしたがいずれも断られたことにより、会計帳簿を作成することができず、課税標準等を認識することができなかったのであるから、納付すべき税額が生じていたことを明確に認識していたとまではいえない。また、A社に利益が生じていたことの認識があった旨及び請求人が長期間にわたり申告をしなかった旨の税務署の主張は、A社の状態及び無申告の状態を説明したにすぎず、このことにより、A社に、無申告を意図しその意図を外部からもうかがい得る特段の行動があったとはいえない。

確定申告をしなかったのは、確定申告の方法が分からず、会計帳簿の作成方法も分からず、利益の把握もできなかったからであり、税金の計算ができなくなることを目的としたなどというわけではない。

 

(不服審判所の判断)

重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合、又は、隠蔽又は仮装という不正手段を用いて法定申告期限までに申告をしなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものが隠蔽又は仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたこと、又は法定申告期限までに申告がされなかったことを要するものである。

しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

今回のケースでは、A社が無申告であった平成16年11月期以降の期間において、平成23年から複数の税理士に税務代理を断られている。そうすると、長年にわたり会計帳簿を作成せず、これを改めることなく申告をしなかったことは認められるものの、漫然と無申告の状態を放置していたわけではなく、むしろ、申告をしようとしていたことがうかがえる。

A社は、税務調査において、税務調査担当職員に書類を提示している。そして、その後、確定申告書の提出の勧奨にも応じて申告しており、その確定申告書を見ると、A社が税務署に提示した書類に基づき算定されていた。

これらの事実からすれば、A社が無申告で済ませようとする態度を貫いたとか、税務調査に非協力的な態度をとったとか、本件調査を困難ならしめる状況を作出したなどと評価することもできない。

事情を総合すると、A社は、申告の必要性を認識しながら、これをしなかったことは認められるものの、税を免れようとする確定的な意思に基づいて無申告を貫いていたとまで評価することはできないから、その無申告行為そのものとは別に、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めることはできない。そして、その他関係資料及び審判所の調査の結果によっても、A社が、法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認めるに足りる事実はない。

A社に、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があったと認めることはできない。

 

(日々でやるべきこととは)

自社で経理処理できるのであれば、自社で経理処理を行い、できないのであれば、税理士事務所等に頼むなどして、必ず、会計帳簿等の記録を残しておくことが必要です。

また、無申告の期間があると、税理士から税務顧問契約等を断られるリスクがあります。少なくとも無申告の期間の書類は廃棄せず保管して、税理士等が経理処理を行って税務申告できることができるようにしておくことが必要です。

 

(税務調査でやるべきことは)

無申告があったとしても、可能な限り書類を税務調査担当職員に提示して、単純に、経理知識や税務知識がなかったこと等で申告できなかったことを理解してもらうよう努めることが必要です。

 

裁決

(令和2年2月13日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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