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青年会議所の費用 (平成27年7月28日裁決の一部)

法人の代表者が、青年会議所ロータリークラブライオンズクラブ等の地域の団体に所属している例はたくさんあります。通常、代表者は自己のためより、法人の営業等につなげるためなど、法人の利益に資するために所属していることが多いと思います。しかし、法人税の通達では、このような団体の費用について、法人の交際費や寄付金、さらに費用と認めず代表者個人の支出とされてしまうことがあります。

通達抜粋

法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。

(1)入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。

(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

 

(状況)

A社は、A社代表者であるBさんがJCの会議等に出席するための交通費、宿泊費及び日当を、A社の旅費規程に基づいて支給することとし、旅費交通費として計上していた。

Bさんは、JC会議等において、式典及び会議に参加し、また、講演、フォーラム及びセミナーを受講し、さらに、自己トレーニングを実践するなど、各会議等のプログラムに沿った活動をしていた。また、各会議等の一部については、主催者の立場でプログラムの内容を企画し、運営するなどしていた。

国際JCは、恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」、「個人の機会」、「地域社会の機会」及び「国際性の機会」の4つの機会を掲げ、「ビジネスの機会」では、フォーラムやプログラムを通じて、会員が行動する社会企業家として必要なビジネスチャンスとリーダシップ、そして個人的なビジネスの成長を支援すると定めている。

日本JCは、日本各地に所在する青年会議所を総合調整してその意見を代表し、全国的規模の運動を展開して、日本国民の利益の増進を図るとともに、国際JCと協調して世界の繁栄と平和に寄与することを目的とし、事業を実施する。

Bさんが所属している地域JCは、日本JCに属する会員会議所であり、会員の連携を密にすること及び会員の自己の啓発に努めるとともに、地域社会及び国家の発展を図り、世界の平和と繁栄に寄与することを目的としている。

Bさんは以下のことを説明している。

1.Bさんが出席したJCの各会議等のプログラムには、各会員が営む事業を紹介することや、当該事業に関連した営業活動をすることはなかった。

2.JCの活動を通じて各会員間相互の人間関係が形成されるため、JCにおいては各会員の事業内容を伝える機会が与えられ、それをきっかけに、互いに取引先という関係にまで発展させることも大いに期待でき、実現もしている。その結果、各会員が取引先を拡大し、事業を発展させることができる。国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を組み込んだのは、このような形で、各会員の事業の成長が積極的に行われるべきことを意図してのものである。

 

(税務署の主張)

日本JC及びBさんが所属している地域JCの事業の内容からすると、Bさんが各会議等に出席することは、A社の事業遂行上必要であったとはいえない。

JCの各会議等は営業活動を目的とするものではないから、A社がJCの会員等から注文を受けることがあったとしても、それは副次的な効果にすぎない。

国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げていると主張するものの、その内容は抽象的であり、詳細も不明である上、現在も日本JC及びBさんが所属している地域JCの定款に「ビジネスの機会」についての定めはない。また、本件各会議等が受注活動や新規事業の開拓を目的として開催されていたとは認められない。

 

(納税者の主張)

JCの活動は、リーダーの育成に資するものであり、請求人は、経営者教育の一環として、BさんをJCに入会させ、各会議等に出席させている。そして、現に各会議等の中で、組織論をはじめとする経営学を学習し、会議の進め方、稟議書の取り方及び事業計画の策定の仕方を習得することで、経営者としての能力を向上させることができ、これらの活動を通じて得た技能や経験は請求人の事業にそのまま利用されている。したがって、各会議等を含むJCの活動に係る支出は、A社の経営者に対する教育費用としての性質を有する。

JCの活動の中心は青年経済人である会員との交流にあるところ、A社は、会員との交流や人脈の確立が事業に貢献することを期待して、BさんをJCに入会させた上、各会議等に出席させた。そして、JCの活動の場において、会員との交流や人脈を確立し、また、営業活動を行うことで、現に、A社JCの会員等を取引先として、約1億円を売り上げた上、輸入するに至っている。したがって、各会議等を含むJCの活動に係る支出は、A社の受注活動費用としての性質を有する。

Bさん講演等に参加することで、国際的に生じている問題をビジネスチャンスと捉え、A社の事業に結び付けている。したがって、各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の新規事業の開拓費用としての性質を有する。

国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げたのは、JCの活動がビジネスに役立つことを正式に認めた上で、CJの活動を通じて会員がビジネスチャンスを獲得し、また、個人的なビジネスの成長を支援する意図に出たものである。このように、国際JCが、恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げていることからしても、各会議等を含むJCの活動に係る支出は、請求人の事業遂行上必要な費用である。

 

(不服審判所の判断)

JCは、特定の個人又は法人の利益を目的とするものではなく、社会の発展や世界の平和と繁栄への寄与といった公益的な目的を達成するために各種の事業を行うこととしており、特定の個人又は法人の利益を目的として行われるものとは認められない。

国際JCが恒久的プログラムの1つとして「ビジネスの機会」を掲げたことにより、JCの会議等の中で各会員の事業内容を紹介し、又は、アピールして営業活動をすることができるわけではなく、各会議等でもそのプログラムの中で、各会員が事業内容を紹介することや、事業に関連した営業活動をすることはなかった旨答述するなど、本件各会議等においてはその参加者が自身の事業活動をする機会がなかったことが認められる。そうすると、Bさんの各会議等への出席は、社会の発展への寄与などのJCの活動目的を遂行するためのものであったと認められるから、旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、A社の事業の遂行上必要なものであったとはいえず、Bさんが個人的に負担すべきものである。

Bさんが各会議等に出席したことが、取引先の確保や代表者の経営者としての能力の向上、新規事業の開拓に寄与することになったとしても、各会議等への出席が社会の発展への寄与などのJCの活動目的を遂行するためであるから、それはJCの活動に付随する副次的な効果にすぎず、各会議等への出席がA社の事業の遂行上必要なものであったということはできない。また、国際JCが恒久的プログラムの一つとして「ビジネスの機会」を掲げ、会員が行動する社会企業家として必要なビジネスチャンスやビジネスの成長等を支援すると定めているとしても、それは、JCの会員の利益を目的として行うものではなく、社会の発展に寄与するビジネスの機会や支援を表明したものと理解することもでき、国際JCが恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」を掲げているとしても、そのことをもって各会議等への出席が、社会通念に照らし客観的にみてA社の事業の遂行上必要なものであったということはできない。

したがって、旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、A社の事業遂行上必要な費用ではなく、Bさんが個人的に負担すべきものであるから、Bさんに対する給与に該当する。

 

(日々でやるべきこととは)

青年会議所ロータリークラブライオンズクラブ等の費用は、通達上、法人の交際費や寄付金、さらに費用と認めず代表者個人の支出となっております。したがって、このような費用は、通達に沿った処理にせざるを得えません。

不服審判所においても、通達に違法性がなければ通達に従わなければならず、もし、このようは費用について争うのであれば、税務訴訟まで視野に入れて対応しなければなりません。

 

裁決

(平成27年7月28日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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