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マンションの共用部分の賃貸収益 その1(平成25年10月15日裁決の一部)

マンション等の管理組合で法人税法上の収益事業を行った場合、法人税の課税が行われるのでしょうか。

法人税法では、人格のない社団等が法人税法上の収益事業を行った場合には、法人税課税がされることとなっています。一般的なマンション等の管理組合は人格のない社団等に該当することから、マンション等の管理組合が法人税法上の収益事業を行った場合は法人課税がなされます。

マンション等の管理組合が屋上や駐車場を組合員以外に賃貸した場合の収入は、マンション等の管理組合に帰属するのでしょうか。それとも、管理組合の構成員となる組合員に帰属するのでしょうか。

 

(状況)

A管理組合は、区分所有法第47条第1項の規定による管理組合法人として登記されていない。

A管理組合を構成する組合員の資格は、団地の各建物の区分所有権を有する者とし、組合員の包括承継人及び特定承継人は、組合員としての一切の権利義務を承継している。

A管理組合の規約には、共用部分から生ずる利益の収取について別段の定めはない。

団地建物所有者は、1戸につき月額12,000円の修繕積立金をA管理組合に納入しなければならず、また、修繕積立金は、土地及び共用部分に係る費用として積み立てこれに充当し、修繕積立金及びその利息は、理由のいかんを問わず払い戻さないと規約に規定されている。

A管理組合は、B社と、平成8年4月30日付で、団地Z棟の塔屋の一部に係る賃貸借契約を締結した。なお、B社との賃貸借契約は、契約期間満了後2年間延長され、その後、新たに平成20年3月12日付賃貸借契約が締結された。

また、A管理組合は、C社と、平成15年8月5日付で、団地Y棟の塔屋の一部に係る賃貸借契約を、さらに、平成18年8月10日付で、団地X棟の塔屋の一部に係る賃貸借契約を、それぞれ締結した。

各賃貸借契約に基づき、B社は団地Z棟の塔屋に、C社は団地Y棟及びX棟の塔屋に、それぞれ自動車電話・携帯電話無線基地局等を設置した。

各賃貸借契約に基づきA管理組合は団地共用部分の賃貸料を受領した。

平成8年4月21日に行われた定期総会において、賃貸借契約B社から支払われる賃貸収入を、団地建物所有者に分配せず、修繕積立金会計に繰り入れることが合意された。

平成8年5月15日に行われた定例理事会において、出席者から、B社から1月分増額して支払われた賃貸収入につき、自治会等への支払との関連から、管理費会計の収入の部への算入を検討する必要がある旨の発言があったが、同年6月12日に行われた定例理事会において、B社から支払われた1年分の賃貸収入を、修繕積立金会計の収入の部に計上することが承認された。

平成16年6月12日に行われた定例理事会において、賃貸借契約に基づきC社から支払われる賃貸収入については、平成15年4月から平成16年3月までは修繕積立金会計の収入とするが、来年度以降の運用は来年度総会で決定することとされた。

平成18年3月8日に行われた定例理事会において、賃貸借契約が締結されるならば、C社から支払われる賃貸収入を組合員に還元すべきであるとして、大規模災害時の必要経費として積み立てること、自治会活動やサークル活動への助成金とすること、遊具の設置等に充てることなどが提案されたが、A管理組合としては、管理費や修繕積立金の値上げが難しいことから、少しでも資金を貯めておく必要があるとして、その後も議論することとされた。

A管理組合の会計は、管理組合費会計、修繕積立金会計及び水道料会計に区分されているところ、各事業年度の修繕積立金会計には、団地建物所有者が規約に基づいて納入する修繕積立金等とともに、賃貸収入が「移動通信網賃貸料」等として繰り入れられ、同会計からは、団地の共用部分に係る修繕費が支出された。

団地建物所有者が規約により納入すべき修繕積立金は、平成8年頃から平成24年3月期までの間、一月当たり12,000円であった。

団地建物所有者のうち○○戸の各区分所有者の署名・押印がある「○○書」と題する書面によれば、当該各区分所有者は、賃貸収入が賃貸借契約の締結時から区分所有者の収入であること及び団地建物所有者の同意を得て賃貸収入を修繕積立金会計に繰り入れ、修繕費の支払に充てていることにつき認識している旨の記載がある。

 

(税務署の主張)

A管理組合は、

1.総会の決議において、A管理組合が管理している団地共用部分を賃貸借することについての意思決定を行い

2.A管理組合が携帯電話会社と賃貸借契約を締結し

3.賃貸収入をA管理組合の修繕積立金会計において「移動通信網賃貸料」として収入の部に計上し、翌年度に繰り越して運用している。

なお、団地共用部分から生ずる利益については、区分所有法にあるように、区分所有者に帰属はするものの、団体的拘束から自由ではなく、区分所有者集会の決議等により団体内においてこれを区分所有者に分配すること並びにその金額及び時期が決定されて初めて、区分所有者に具体的に行使可能な、収益分配請求権が発生すると解するのが相当であると判示されているところ、賃貸収入については、規約や総会等において、団地建物所有者に対する分配方法、分配金額及び分配時期等について何ら定められていない。

区分所有法は、区分所有者の団体は登記することにより管理組合法人となることができる旨規定しており、当該法人は法人税法上の公益法人等とみなされるところ、A管理組合はその事務に関し区分所有者を代理する旨の管理組合法人と同等の規定が置かれている。したがって、管理者はその職務に関し、区分所有者を代理する旨規定していることをもって、法人税法のらち外と捕らえることには理由がない。

賃貸収入は、

1.A管理組合請の会計において修繕積立金として積み立てられ、理由のいかんを問わず払い戻されないこと、

2.A管理組合の業務として修繕積立金会計の運用及び剰余金の翌期への繰越しがなされていることから、当該収入に係る金員はA管理組合固有の資産・資金でないとのA管理組合の主張には理由がない。

 

(納税者の主張)

規約第○条により、共用部分は区分所有者の共有とされているところ、規約に別段の定めはないので、区分所有法により、共用部分から生ずる利益は各区分所有者がその持分に応じて収取することになる。

全○○戸の団地建物所有者が携帯電話会社と個々に契約を行うことは困難であるとの理由により、A管理組合が代理人として契約を行っているところ、区分所有法により、管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理するとされていることから、A管理組合の行為は団地建物所有者の商行為を代理するものとなり、民法により、代理人たるA管理組合が行った行為の効果は、直接、本人である団地建物所有者に帰属する。

賃貸収入を団地建物所有者に分配し、修繕積立金の上乗せとして徴収する事務手続が煩雑かつ実現不可能であるため、

1.賃貸収入は団地建物所有者の収入であること、

2.その収入を修繕積立金として受け入れ、団地共用部分の修繕に充てることについて、団地建物所有者の合意の下、A管理組合は、賃貸収入を修繕積立金会計に積み立てている。

また、規約第31条第5項により、修繕積立金及びその利息は理由のいかんを問わず払い戻さないと定められていること、入退去者が発生するたびに賃貸収入に係る修繕積立金会計から退去者への払戻しを行い、新たな入居者にマンションの購入代金の他に修繕積立金を支払わせるなどということは実際には不可能であることから、団地建物所有者が資格を喪失したときに、修繕積立金会計を取り崩して賃貸収入を返還していない。

さらに、A管理組合は、独自の判断においてその費用配分を決定することができないことから、賃貸収入を修繕積立金会計に積み立てているのであって、賃貸収入に係る金員はA管理組合の資産・資金ではない。

 

(不服審判所の判断)

A管理組合は人格なき社団であるから、法人税法上、その構成員から独立した収益の帰属主体として扱い得ることとなる。

A管理組合は、区分所有法の規定等により、団地建物所有者の代理人として賃貸借契約を締結したのであり、代理人たるA管理組合が行った行為の効果は、直接、本人である団地建物所有者に帰属する旨主張する。しかしながら、A管理組合は、各賃貸借契約を締結した当事者であると認められる。なお、A管理組合が団地建物所有者各人の代理人として当該契約を締結したのではないことは、各賃貸借契約の契約書中に、団地建物所有者各人の記載はなく、A管理組合が、団地建物所有者各人のために契約を行うことを示したとも認められないことや、仮に団地建物所有者各人を当事者として各賃貸借契約を締結したのであれば、契約の相手方としては、団地建物所有者の一部が交代するごとに新たな所有者と契約を締結する必要があるところ、各賃貸借契約の内容や、契約締結当時のA管理組合の定期総会の議事録の内容等からしても、かかる事態が想定されていたとは考え難いことからも明らかである。したがって、管理者がその職務に関し団地建物所有者を代理する旨定めた区分所有法の規定等を根拠としたA管理組合の主張が、団地共用部分から生じる利益の帰属に係る認定を妨げることにはならない。

区分所有法は民法の特別法であるところ、区分所有法により、区分所有関係が成立している建物の共用部分の共有関係については、民法の共有に関する規定に優先して適用される。

区分所有建物においては、各区分所有者は、1棟の建物の一部を構成する専有部分に対して排他的な所有権を有する一方で、専有部分がその機能を保つために必要不可欠の補充的機能を営む共用部分に対して有する共有持分については、その分割又は解消を禁止され、専有部分と分離しての処分ができないなど、相互の拘束を受ける関係にある。区分所有者らのこのような関係に照らすと、区分所有者らの間には、一種の人的結合関係が性質上当然に成立しており、各区分所有者は、当該結合関係に必然的に伴う種々の団体的拘束を受けざるを得ない関係にあると解するのが相当である。

ところで、区分所有法によれば、共用部分から生ずる利益は、規約に別段の定めがない限り区分所有者各人がこれを収取するものとされているものの、これとて必然的に団体的拘束を受けざるを得ないものであり、分配についての具体的な団体としての意思決定を経ないまま、その発生と同時に当然に各区分所有者が収受するものと解することはできない。同規定の定める区分所有者の権利は、区分所有者集会決議等により団体内において具体的に当該利益を区分所有者らに分配すべきこと並びにその金額及び時期が決定されて初めて、各区分所有者らにおいて具体的に行使可能ないわば支分権としての収益金分配請求権が生ずるということにすぎないものと解するべきである。結局、共用部分から生じた利益は、一旦区分所有者らの団体に帰属して団体の財産を構成するのであり、利益が一度団体に帰属した以上は、当該団体が法人税の納税主体であるなど一定の場合には、法人税の課税対象となり得ると解するほかない。

共用部分から生ずる利益は、規約には別段の定めはないから、区分所有法の規定によれば、区分所有者である団地建物所有者がその持分に応じて収取する権利を有していることとなる。

しかしながら、規約第○条及び第○条に基づいて共有部分を管理するA管理組合が、A管理組合団体内部における意思決定である定期総会の決議に基づき、A管理組合を当事者として各賃貸借契約を締結し、賃貸収入を収受しているのであるから、賃貸収入は一旦人格なき社団であるA管理組合に帰属してA管理組合の財産を構成する。そして、賃貸収入が、一旦A管理組合に帰属した段階で、法人税の納税主体であるA管理組合の収益として、法人税の課税対象となり得るのである。

A管理組合の主張する区分所有法の規定は、区分所有者集会決議等により団体内において具体的にこれを区分所有者らに分配された後、初めて行使可能な収益分配請求権が生ずることをいうものにすぎず、これをもって、賃貸収入がA管理組合に帰属しないものということはできない。また、規約にも、賃貸収入が特段の分配手続を必要とせず当然に団地建物所有者各人に帰属するというA管理組合の主張を根拠づけるに足る規定はない。

A管理組合は、

1.賃貸収入を団地建物所有者に分配し、修繕積立金の上乗せとして徴収する手続が煩雑かつ実現不可能であること

2.団地建物所有者の入退去の際に、修繕積立金の徴収や払戻しの手続を行うことは実際には不可能であること

3.A管理組合は独自の判断において費用配分を決定することができないことなどを理由として、修繕積立金会計に繰り入れたが、賃貸収入に係る金員は、団地建物所有者各人に帰属するものであってA管理組合の資産・資金ではない

旨主張し、その証拠として、団地建物所有者のうち、8割以上の区分所有者が署名・押印した○○書を提出している。

しかしながら、各賃貸借契約はA管理組合を当事者として締結され、これに基づく賃貸収入は、その費途等が定まる前に一旦A管理組合に帰属し、これをもってA管理組合の収益を構成したとみるほかないものであり、賃貸収入が修繕積立金に使用されるに至った個別の事情や、団地建物所有者の多くの者の認識によって左右されるものでもない。

そして、A管理組合が賃貸収入に係る金員を団地建物所有者に分配していない理由とした内容はどうあれ、当該金員を団地建物所有者へは分配せず、これを団体的拘束の下に支出することが合意されている。

したがって、これらの事情等があるからといって、賃貸収入に係る金員がA管理組合の資産・資金でないということはできない。

なお、A管理組合に帰属した後の賃貸収入については、結局、定期総会等において、当該賃貸収入に係る金員を団地建物所有者に分配する旨の決議はされず、当該金員は、一貫して、A管理組合の会計に繰り入れられ、団地共用部分の修繕費の支出に充てられていることが認められる。

このことは、団地建物所有者の総意の下、賃貸収入を団地建物所有者へは分配せず、A管理組合に帰属した状態において、これを団体的拘束の下に支出しているものと認めるのが相当である。

以上からすると、賃貸収入は、団地建物所有者らの団体、すなわちA管理組合に帰属する収益であると認められる。

 

(日々でやるべきこととは)

マンション等の管理組合は、税務上の人格のない社団等に該当し、また、収益事業の収入はマンション等の管理組合に帰属し、法人税課税がなされます。

税務に精通している方が管理組合にいらっしゃったり、業務委託をしている管理会社がしっかりしているのであれば、収益事業を行った場合、法人税課税がなされ法人税を申告、納付することはわかるかもしれませんが、そうでない場合には、わかるとは思えません。

しかし、知らなかったから法人税の申告をしなくていい、納付しなくていいということにはなりませんので、管理組合の方々は過去も含め、収益事業を行っていないかどうかを確認していくことが必要です。

 

 

裁決

(平成25年10月15日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

 

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