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管理組合は人格のない社団等に該当するのか (平成25年10月15日裁決の一部)

マンション等の管理組合で法人税法上の収益事業を行った場合、法人税の課税が行われるのでしょうか。

法人税法では、人格のない社団等が法人税法上の収益事業を行った場合には、法人税課税がされることとなっています。したがって、マンション等の管理組合が人格のない社団等に該当し、かつ、法人税法上の収益事業を行った場合は法人課税がなされます。

しかし、そもそも、マンション等の管理組合が人格のない社団等に該当するのでしょうか。

 

(状況)

A管理組合は、区分所有法第47条第1項の規定による管理組合法人として登記されていない。

A管理組合を構成する組合員の資格は、団地の各建物の区分所有権を有する者とし、組合員の包括承継人及び特定承継人は、組合員としての一切の権利義務を承継している。

A管理組合には、A管理組合の総会において選出された理事長1名、副理事長2名以上、理事19名以上及び監事3名の役員を置き、当該役員は、団地建物所有者でなければならないとA管理組合の規約に規定されている。

理事長は、A管理組合を代表し、その業務の統括等をし、また、理事長は区分所有法上に規定する管理者とすることとA管理組合の規約に規定されている。

A管理組合の総会は、総組合員で組織することとA管理組合の規約に規定されている。。

組合員は、その所有する住戸1戸につき各1個の議決権を有し、A管理組合の総会の会議は、議決権総数の2分の1以上を有する組合員が出席しなければならなく、また、総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決し、可否同数の場合においては、議長の決するところによることとA管理組合の規約に規定されている。

A管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、理事長は、毎会計年度の収支予算案を定期総会に提出し、その承認を得なければならなく、また、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、定期総会に報告し、その承認を得なければならないこととA管理組合の規約に規定されている。

 

(税務署の主張)

A管理組合は、団地建物所有者全員によって構成された団体であるところ、規約によれば、A管理組合の役員は、A管理組合の総会において、団地建物所有者の中から選出された理事で構成され、当該理事の中からA管理組合の代表者である理事長が1名選任される旨定められている。また、A管理組合は、管理組合法人として登記されていない。

したがって、A管理組合は、法人税法に規定する法人として登記されていない代表者の定めのある人格のない社団等に該当する。

 

(納税者の主張)

A管理組合は、ボランティア団体として団地の維持管理を行っているにすぎない。「人格のない社団等」という言葉は一般的に知られている言葉ではなく、税務署は周知や指導をしていないのであるから、A管理組合には、人格のない社団等に該当するか否かの認識がない。

 

(不服審判所の判断)

法人は、民法その他の法律の規定によらなければ、成立することができないが、法人税法は、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを「人格のない社団等」と定義し、法人とみなして同法の規定が適用されることとしている。

これは、私法上の概念である「法人格を有しない社団(いわゆる権利能力のない社団。」が、その構成員から独立して活動を行うことがあり、私法上も法主体性が認められていることから、法人税法においても、これを法人とみなし、その構成員から独立した納税の主体としたものと解される。

私法上の概念である「法人格を有しない社団」といい得るためには、共同の目的のために結集した人的結合体であって、

1.団体としての組織を備え

2.多数決の原則が行われ

3.構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続し、

4.その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定している

団体でなければならないものと解されている。

法人税法上の人格のない社団等の範囲については、私法上の「法人格を有しない社団」と同様の考え方によるべきである。

A管理組合は、管理組合法人として登記されていないものの、団地建物所有者の全員をもって構成される団体である。

A管理組合は、団地の共有部分及び共用施設並びに土地を管理し、これらの共同利益を維持すること及び、管理の円滑化のための居住者の理解と意思疎通及び共同の生活環境の向上を図る自治活動のための必要な業務を行うことという共同の目的のために結集した人的結合体である。

そして、

1.「管理組合」の名称を有し、規約を定め、これに基づいて団地の土地及び共用部分等の管理を行うこととし、総会を組織し、理事長以下の役員を置くなど、団体としての組織を備えていること

2.A管理組合の総会において組合員は、その所有する住戸1戸につき各1個の議決権を有し、組合は議決権総数の2分の1以上の組合員の出席により成立し、出席者の過半数をもって議事を決定するなど多数決の原則が行われていること

3.A管理組合の構成員である組合員は団地の区分所有権を有する者とされているから、当該区分所有権が譲渡された場合はA管理組合の構成員が変更されることとなるが、その変更にかかわらず、請求人は引き続き存在すること

4.A管理組合の理事長、副理事長、理事及び監事の役員は総会で選出され、理事長はA管理組合を代表し、その業務を統括すること、総会は定期的に開催されること、また、独立した会計をもち、請求人の会計年度を毎年4月1日から翌年3月31日までとし、総会において収支予算案及び収支決算案の承認を得なければならないことなどが確定しており、代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることが認められる。

これらの事実等からすれば、A管理組合は、の私法上の法人格のない社団としての要件を充足した団体であると認められる。

A管理組合は、税務署は周知や指導をしていないのであるから、A管理組合には、人格のない社団等に該当するか否かの認識がない旨主張する。しかし、A管理組合が人格のない社団等に該当するか否かについては、A管理組合に人格のない社団等に該当するか否かの認識がなかったとしても、法の不知により、法人税法の規定を適用しないとする規定はないから、この点に関するA管理組合の主張には理由がない。

したがって、A管理組合は、人格のない社団等に該当する。

 

(日々でやるべきこととは)

マンション等の管理組合は、税務上の人格のない社団等に該当します。したがって、収益事業を行った場合には、法人税課税がなされます。

税務に精通している方が管理組合にいらっしゃったり、業務委託をしている管理会社がしっかりしているのであれば、収益事業を行った場合、法人税課税がなされ法人税を申告、納付することはわかるかもしれませんが、そうでない場合には、わかるとは思えません。

しかし、知らなかったから法人税の申告をしなくていい、納付しなくていいということにはなりませんので、管理組合の方々は過去も含め、収益事業を行っていないかどうかを確認していくことが必要です。

 

 

裁決

(平成25年10月15日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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