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修繕費の損建区分 その1(令和1年12月18日裁決の一部)

修繕費の損建区分 その1(令和1年12月18日裁決の一部)

 

建物を修繕したとき、その支出が建物の取得価額として固定資産に計上されるのか、それとも修繕費として損金算入か、よく問題になります。

また、修繕したタイミングが建物を購入した時なのか、ずっと建物を使っていたかによっても結論が変わることもあります。

このケースでは、修繕費として認められず、建物の取得価額となりました。

 

(状況)

A社は平成28年6月2日に、建物をその敷地とともに敷地の対価として45,000,000円、建物の対価として55,000,000円、本件取得物件に係る消費税及び地方消費税として4,400,000円の計104,400,000円で買い受けた。

売買契約書には、A社が建物に賃借人が入居している状態で、現状有姿にて買い受ける旨の特約が付されている。

A社はB社と平成28年7月12日に、建物の防水、塗装等を内容とする改修工事を請負金額13,176,000円で施工させる旨の工事請負契約を締結した。この改修工事は、平成28年11月に完了し、A社は、改修工事額を修繕費として経理し、法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入した。

A社の代表取締役は、建物を取得する以前の平成26年9月頃に、B社に対し、建物の修繕について相談したところ、B社担当者は、建物を調査した結果、修繕工事を行わない限り居住者が居住し続けることが困難な状況である旨の報告をA社に対してするとともに、修繕に係る見積書を送付した。

A社からは、上記見積書に対する応答はなく、結局、建物について、建物等の売買契約以前に修繕等の工事がされたことはなかった。

売買契約当時、建物には雨漏りが生じており、特に、1階部分は外壁からの雨水の浸入により通常の使用に支障が生じる部分があった。また、屋根についても破損などはなかったものの、塗装をやり直すことが必要な状態であった。

改修工事は、防水工事、外壁工事、塗装工事を主な内容とするものであり、具体的には、廊下及び踊り場部分のコーキングの打替え、本件各建物の外壁の全体に係るひび割れの補修、塗装のやり直し、隙間の充填及び屋根の塗装を主な内容とし、これらの工事に加えて外壁の漏水修繕も行われた

 

(税務署の主張)

建物は、A社が取得した時点において、老朽化し、修繕しなければ居住者が居住し続けることが困難な状態であった。改修工事は、かかる状態を解消するために施工されたものであるから、建物の価値を高め、その耐久性を増すものであると認められる。

したがって、改修工事のために支出された改修工事額は、法人税法施行令第132条に規定する資本的支出に該当する。

 

(納税者の主張)

改修工事は、工事の内容によれば、建物の価値を高め、その耐久性を増すものとは認められない。また、A社は、建物を取得するまで建物が老朽化し居住が困難な状態であったことを知らず、その維持管理のためやむを得ず想定外の改修工事を施工したものである。

したがって、改修工事のために支出した改修工事額は、修繕費に該当し、法人税法施行令第132条に規定する資本的支出には該当しない。

 

(不服審判所の判断)

法人税法施行令第132条は、内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額のうち、その支出により、

①当該資産の取得の時において、当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

②当該資産の取得の時において、当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

については、資本的支出に該当し、損金の額に算入しない旨規定している。

そして、同条第1号及び第2号の文言からすれば、支出による当該資産の使用可能期間の延長又は価額の増加の有無の判断は、固定資産取得後に通常の管理又は修理がされることを前提として、当該資産を取得した時点で予測される「その支出をした時点の当該資産の使用可能期間又は価額」を基準としてされることは明らかである。

そうすると、固定資産について支出した金額が資本的支出又は修繕費のいずれに該当するのかは、当該資産を取得した時点で予測される「その支出をした時点の当該資産の使用可能期間又は価額」に比べて、その支出によって当該資産の使用可能期間が延長したり、価額が増加したか否かを、その支出の内容及び効果等の実質に照らして判断することが相当である。

契約当時、建物は、いずれも新築から20年以上経過した物件であることに加え、A社が取得するまでの間、修繕等の定期的な工事がされたことはなく、雨漏りなどにより通常の使用に支障が生じる部分が存する状態であったところ、A社は、建物を現状有姿により買い受けている。

そして、A社は、このような状況の建物について廊下及び踊り場部分のコーキングの打替えや、建物全体について外壁のひび割れの補修や防水のための塗装のやり直し等を実施し、建物として通常の使用が困難であった状況を解消したのであり、建物は、改修工事によりその使用可能期間が延長し、価額が増加したと評価できる。

そして、A社は、建物を取得した翌月に改修工事に係る契約を締結した上で遅滞なく施工していることからすれば、建物を取得した時点で予測される、改修工事に係る費用の支出をした時点の建物の使用可能期間及び価額は、建物の取得時における使用可能期間及び価額とほぼ同程度と考えられるのであるから、建物は、改修工事により、建物を取得した時点で予測される「その支出をした時点の当該資産の使用可能期間又は価額」よりも、その使用可能期間が延長し、価額が増加したと評価できる。

以上によれば、改修工事のために支出した改修工事額は、資本的支出に該当するというべきである。

 

(日々でやるべきこととは)

取得してすぐに修繕等を行った場合には、資本的支出に該当してしまう可能性が高いと考えられます。

例えば、取得前に売主側で修繕した場合には、当然、その修繕に係る金額は、売買価額に上乗せして交渉がなされるはずです。そのため、売主側で修繕するか、買主側で修繕するかで建物取得価額になるのか修繕費になるのか違いが生じるのは税務署からするとおかしいと考えられてしまいます。

もし、修繕を行って修繕費として損金処理を行うのであれば、取得してすぐに行うのではなく、期間を開けて行う必要があります。

 

 

裁決

タインズから出典

名裁(法)令元第11号

令和元年12月18日

 

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