税務調査は怖くない

税務調査を怖いと思っていませんか。税務調査は健康診断と同じです。普通にしていれば恐れることはありません。税金相談、税務調査の対応などを ご希望の方は wonozeimu@gmail.com までお気軽にご連絡ください。

消費税の免税業者の基準(平成13年3月14日裁決の一部)

2023年10月よりインボイス制度が導入されると消費税の免税業者になるか、ならないかの基準が、この裁決事例とは違ってくるかもしれませんが、現在の消費税の免税業者の基準はどうなっているのでしょうか。

 

消費税は、課税期間の課税売上(消費税がかかる売上)が10,000,000円以下の場合、消費税を納めなくていい免税業者になります。

 

現在、免税業者であっても、相手先に消費税を加えてお金を貰うことも可能ですし、消費税を加えず本体価額のみでお金を貰うことも可能です。

(普通は、消費税を加えてお金をもらった方が多くもらえるので、免税業者であっても、消費税を加えているケースが多いと思います。)

 

そうすると、例えば、本体価額が9,500,000円で消費税が950,000円の場合、消費税を貰う場合10,450,000円になり、

免税業者になるのでしょうか、

それとも課税業者になるのでしょうか。

 

 

(状況)

Aさんは、課税期間に係る基準期間に当たる平成8年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件基準期間」という。)及び平成9年1月1日から同年12月31日までの課税期間において、免税事業者に該当する。

Aさんの基準期間(平成8年)における課税資産の譲渡等の対価の合計額は、30,824,722円である。

(この時点の基準は10,000,000円でなく30,000,000円でした。)

Aさんの課税期間における課税資産の譲渡等の対価の合計額は、34,403,004円であり、控除対象仕入税額は、954,144円である。

 

(税務署の主張)

納税義務者について、消費税法第5条第1項は、事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務があると規定し、同法第9条第1項は、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が3,000万円以下である者については、同法第5条第1項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務を免除すると規定している。

このように、消費税法第9条第1項は、納税義務者についての原則的な規定である同法第5条第1項の規定の適用を排除し、その例外を規定していることから、同法第9条第1項は、納税義務者の範囲を規定したものであって、免税事業者においていったん発生した納税義務が消滅することを規定したものではない。

また、消費税法第9条第1項は、納税義務を「免除する」という用語を使用しているが、これは、基準期間における課税売上高が3,000万円以下であれば、同項の規定により、法律上当然に当該基準期間に対応する課税期間においては、当該課税期間の当初からそもそも納税義務を負わないこととなることを規定しているものであって、いったん発生した納税義務を、課税期間開始後、事後的に、税務署長またはその他の行政庁による意思表示その他の行為により消滅させるという意味ではない。

消費税の転嫁とは、自己の課されるべき消費税額等を課税資産の譲渡等の相手方に負担させることであると解されるところ、上記のとおり、ある課税期間において免税事業者である者は、当該課税期間の当初からそもそも納税義務を負わないのであるから、当該免税事業者の行う課税資産の譲渡等の対価の額に、課されるべき消費税額等に相当する額が含まれていると解することはできない。

したがって、Aさんの免税となるかどうかの判定では、総額の30,824,722円を基準とすべきである。

 

(納税者の主張)

消費税法第4条は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課す旨規定している。すなわち、消費税法は、全ての取引を課税の対象としてとらえている。

そして、消費税法第9条第1項は、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が3,000万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務を免除する旨規定している。

このように、消費税法は、事業者の行う資産の譲渡等全てを課税の対象ととらえ、ここにいう事業者から免税事業者が除かれるとの規定はないから、免税事業者が行う取引であっても、全て課税の対象であって、免税事業者の行う課税資産の譲渡等の対価の額にも、課されるべき消費税額及び当該消費税を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額(以下「課されるべき消費税額等に相当する額」という。)が含まれており、ただ、同法第9条第1項の規定により単に納税義務だけが免除されていると解すべきである。

したがって、基準期間における課税売上高は3,000万円以下となるから、課税期間において免税事業者に該当する。

 

(不服審判所の判断)

納税義務の発生による課税関係は、納税義務者に課税物件(課税の対象とされる物、行為又は事実)が帰属したときにその者との間に成立するものであるから、課税物件に該当する行為又は事実が生じたとしても、それが納税義務者に帰属しないときは、納税義務の発生による課税関係は成立しない。そして、消費税法第1条の趣旨並びに同法第4条、同法第5条及び同法第9条の条文見出し及び趣旨に照らせば、同法第4条は消費税の課税物件を、同法第5条は消費税の課税要件としての納税義務者をそれぞれ規定しており、同法第9条第1項は、「同法第5条第1項の規定にかかわらず」と規定していることから、同項の例外規定として、同項に規定された課税要件としての納税義務者の範囲を限定するもの、すなわち、所定の要件を具備した事業者を同項に規定する納税義務者から除外する趣旨のものであると解すべきであり、免税事業者についての納税義務の存在を前提とした上で発生した又は課されるべき消費税を免除することを規定するものではないと解される。

そうすると、消費税法第9条第1項の規定の適用により免税事業者となる者については、納税義務者から除外されるのであるから、たとえ課税資産の譲渡等を行ったとしても、納税義務が発生せず、そうである以上、課されるべき消費税額等に相当する額は存在しない。

課税標準の算出に当たっては、課税資産の譲渡等の対価の額から当該相手方に転嫁された消費税額等を控除すべしとすることにあるのであり、上記のとおり、免税事業者である本件基準期間において請求人の行った課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額等が存在しない以上、本件基準期間における課税売上高の算定に当たり、課税資産の譲渡等の対価の額から控除すべき消費税額等に相当する額も存在しないこととなる。

したがって、基準期間における課税売上高は3,000万円を超える。

 

(この裁決の感想)

そもそも、免税業者は必要なのでしょうか。特に、インボイス制度が導入されるのであれば、免税業者の制度を廃止の検討もしてもいいのではないでしょうか。

 

消費税が導入されたときは、消費税の制度が定着しておらず、混乱が見られることから、免税業者はあったほうがよかったのかもしれません。しかし、消費税導入から、既に30年以上経過し、消費税の制度は定着しているのではないでしょうか。

 

小規模事業者に対しては、簡易課税という制度があり、課税売上だけが分かれば、納めるべき消費税も比較的簡単に計算することができます。

消費税は、事業者が納めるのですから、事業者は、法人であれば法人税、個人であれば所得税の申告をしているはずですから、課税売上がどのぐらいあるかはわかるのではないでしょうか。

 

裁決

(平13.3.14裁決、裁決事例集No.61 623頁) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

・税金相談
・税務調査の対応などを
ご希望の方は
wonozeimu@gmail.com
までお気軽にご連絡ください。