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役員の会社に対する貸付金の相続税での評価は (令和3年11月1日裁決の一部)

亡くなった方が会社の役員であった場合、会社に貸付(当該会社にとっては借入)をしていることが多々あります。

 

また、役員が会社に貸付をするということは、

「会社では資金繰りが苦しい」=「会社の業績が悪い」

という状況に陥っていることも多く、実際に、その貸付を回収することが困難な状況がよくあります。

 

このような貸付を相続税ではどのように評価されるのでしょうか。

 

(状況)

Aさんは、平成29年12月11日に死亡し、Aさんに係る相続が開始した。

Bさんは、Aさんの遺言に基づき相続により、C社に対して有していた貸付金を含むAさんの全ての財産を取得した。

C社の相続開始日におけるAさんからの長期借入金(貸付金)の金額は、60,364,325円であった。

C社は、相続開始日後に資産等を売却し、平成30年7月31日の臨時株主総会において解散することが可決され、同年10月2日の臨時株主総会において清算結了が承認された。

Bさんは、C社に対する貸付金の金額を、C社の解散によって入金された14,054,288円で申告した。

 

(税務署の主張)

・C社の資産状況について、直ちに返済を要するような負債はなく、相続開始日において、金融機関等の第三者から借入金の返済を迫られているような状況にはなかった。

・C社の営業状況について、経済的に破綻していることが客観的に明白な事情があるとは認められない。

・C社は、相続開始日後に解散及び清算結了が行われた。しかし、このことは相続開始日以後の事情にすぎず、これをもって、相続開始日においてC社が経済的に破綻していることが客観的に明白であったことにはならない。

相続税の申告期限までに法人が解散している場合に、それを相続時の事情として、社長が法人に貸し付けている貸付金債権が相続開始時点において回収不能だったと認める実務上の取扱いは存在しない。相続等により取得した財産の価額は、取得の時における時価となっており、貸付金の時価は、相続開始の元本価額により評価した金額60,364,325円と認めるべきである。

 

(納税者の主張)

・C社の債務超過の状態は、相続開始日まで継続し長期に及んでおり、これが解消する目途も全く立っていなかった。C社の負債の主なものは、同族関係者を債権者とするものであったが、返済義務を免れることはできなかったものであり、金融機関等からの債務と区別する理由はない。

・BさんとAさんとの間で、相続開始日前に、C社の事業を継続しないことが決定されていた。このような経緯があったため、Aさんは、貸付金の一部について債権の切捨てを了承していたといえる。

・C社は、相続開始日直後、所有資産を売却した。この事実から、C社において、相続開始日までにC社の事業廃止が決定していたことは明らかである。また、上記の各売却により、Bさんは、貸付金について14,054,288円の返済を受けた。同金額は、貸付金について、市場においてその財産処分を行った場合の清算価値であるものと認められる。したがって、貸付金の時価が14,054,288円であると客観的に立証したことは明らかである。

・本来、相続財産の現況は、相続開始時点で評価することになっているが、相続税の申告期限までに会社が解散している場合は、それを相続時の事情として、社長が会社に貸し付けている貸付金債権は回収不能だったと認めるのが実務である。このような実務運用がなされているのは、相続税の申告期限は相続開始時点から10か月間しかないため、相続税の申告期限までに会社を解散した場合には、相続開始時点で会社の解散が決まっていたとみるのが合理的だからである。C社は、相続税の申告期限までに解散、清算しており、しかも相続開始前から所有資産の売却の準備を進めていたのであり、相続開始時点で会社の解散が決まっていたことは明らかである。

・したがって、C社の解散の際に回収することができた金額14,054,288円を超える部分については、「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するものと認めるべきである。

 

(不服審判所の判断)

債務超過の状況で事業を継続している会社は多数存在するところ、その事業を継続しながら資産状況を回復させ、借入金を返済することは可能であるから、債務超過であることをもって直ちにC社が経済的に破綻しているとはいえない。

C社は、相続開始日の直前まで純損失が生じているものの、各金額はおおむね役員報酬及び減価償却費の合計額を下回るものであり、また、第三者に対する支払資金に充当し得る程度の現金・預金の残高を有していたと認められることに照らすと、少なくとも、保有資産の売却を余儀なくされる状況であったとは認められない。

保有資産の売却は、相続開始日から約7か月後及び約5か月後の事情であり、相続開始日から相当期間が経過していることに加えて、相続開始日に売却に係る契約がされていたなどの事実を認めることはできないから、相続開始日後に保有資産の売却があったことは、相続開始日においてC社が経済的に破綻していたかを判断し得る事情と認めるべき理由にはならない。

したがって、相続開始日において、C社が資産状況及び営業状況等から経済的に破綻していることが客観的に明白であったと認められない。なお、貸付金の元本の価額は60,364,325円と多額であるものの、その返済時期や方法等を調整することは可能であったと認められることからすれば、相続開始日における貸付金に係る債権の回収の見込みについて、これを否定すべき特別な事情に当たるものではない。

以上により、貸付金の債権金額の一部が、相続開始日において「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するとは認められない。

 

(相続開始までに考えること)

会社に貸付がある場合、何もしなければ、相続税では元本により評価されてしまいます。

実際に、回収できるのであれば、元本により評価されても問題はありませんが、回収できないケースも多々あります。

その場合、どうのようにすればいいのでしょうか。

・会社を解散して、貸付金をなくしてしまう。

・デット・エクイティ・スワップを行って、貸付金から株式に置きかえる。

などが考えられます。

 

何もしなければ、相続税上、回収できない貸付金についても相続税が課税されてしまいます。

 

大変な状況になる前に、対応することが望まれます。

 

裁決

タインズより引用

 

 

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