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財産評価通達ではなく鑑定評価での相続財産の評価・総則6項の適用(令和4年4月19日最高裁判決)

令和4年4月19日に最高裁判所において、納税者が財産評価通達によって評価した相続財産を課税当局が行った鑑定評価の方が適切であるとの判決がありました。

この判決の具体的な解説は今回行いませんが、この判例に対して様々な意見、解説等がされております。しかし、非常に多く(多くといいよりはほとんど)事実誤認があり、その事実誤認を前提として意見、解説等がなされております。判決文に事実がきちんと記載されていないことから生じているとは思われますが、主要な事実誤認を記載したいと思います。

 

1.タワーマンションの事案

タワーマンションの事案という説明がされていることが多くあります。特に、判決文にはタワーマンションと記載がないので、なぜ、タワーマンションの事案ということになったのか、非常によく分からないのですが、実際は、2棟の物件で、1棟は都内23区にある8階建ての共同住宅・店舗及びその土地、もう1棟が神奈川県の7階建てのマンション及びその土地が問題になった物件です。

この裁判で問題になったのが建物の評価が重要であったことからタワーマンションの事案と誤認されたのかもしれませんが、本当によく分かりません。

 

2.金融機関の稟議書に相続税対策と記載がある

一部の意見、解説等での説明ですが、金融機関の稟議書に「相続税対策」と記載があったことから節税目的として認定されてしまったというものがあります。しかし。金融機関の稟議書には「相続税対策」ではなく、「相続対策のため」との記載です。

この「相続対策のため」との意味は、主として「事業承継を行うため」ということが本来の意味のようです。

被相続人は、高齢であり、かつ、主として不動産賃貸業を行い、一族の資産管理会社の代表取締役も務めていました。被相続人は様々な物件を保有していましたが、低収益物件などもあり、信託銀行から事業経営財務診断を受けるなどして、事業承継を進めていくことにしました。この事業承継を進めていく上で、北海道で保有している低収益物件を売却し、東京やその近郊の高収益物件を購入するなど、物件の入替えを検討し、実際に物件を売却、購入していました。

物件の入替えをしていく中で、自己資金のみでなく、外部金融機関からの借入を行う必要があり、借り入れを行ったのですが、その時の金融機関の稟議に「相続対策のため」と記載がされてしまったようです。「相続対策のため」でなく「事業承継のため」と記載されていれば、判決は変わっていたのかもしれません。

 

3.短期に物件の売却をしている

確かに神奈川県の物件について、相続開始後約9カ月で売却はしています。この売却について、借入金返済等の目的での売却等の説明がなされていることがあります。

しかし、この売却は、借入金返済等の目的での売却でなく、物件の入替えをする上での売却です。

相続が開始し、金融機関に担保一部解除の協議書を提出していますが、この協議書では、東京23区に保有する物件及び神奈川県に保有する物件を保有し続けることを前提に説明されており、この時点では、売却等の意思はないと思われます。

遺産分割協議が完了した後、都内23区で優良物件の情報が相続人のところに入ってきました。借入金をこれ以上増やすことは得策でないという判断で物件の入替えで購入しようとし、購入資金の手当てのため、この優良物件の購入前に、神奈川県の物件を売却する必要が生じました。神奈川県の物件は無事、売却できましたが、この優良物件は、他社と競合し、結局、購入することができませんでした。そのため、判決文上ではまるで借入金返済等のための売却であるように見えてしまっています。

短期売却の目的は不動産賃貸事業上の不動産の入替えにあり、その入替えが上手く行かなかっただけで、借入金返済等目的での売却ではありませんでした。

 

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