医薬品(漢方薬等)の範囲(令和元年5月22日裁決の一部)
所得税の医療費控除において、薬局等で購入した医薬品をどこまで医療費控除の対象とするか判断に迷うことがあります。今はセルフメディケーション税制があり、薬局等で購入した医薬品をセルフメディケーション税制の控除とすることができます。しかし、セルフメディケーションの控除できる上限が88,000円までとなっており、通常の医療費控除と比べ控除額が大きくありません。
令和元年5月22日裁決事例では、薬局等で購入した医薬品については医療費控除の対象と認めてもらうことができませんでしたが、しかし、一定の条件を満たしていれば医療費控除の対象となる可能性を示しています。
(状況)
Aさんは母のために、B医薬品、C医薬品、D医薬品、E医薬品をインターネットを通じて薬局等で購入し、B医薬品、C医薬品、D医薬品、E医薬品の購入代金を医療費控除の対象とした。
Aさんの母の健康状況
平成26年10月30日特定健康診査を受け、○○、○○である旨、塩分、カロリー摂取を控え、運動を心掛け、○○に関してはなるべく早くかかりつけ医を受診するよう指導された。
平成27年10月23日特定健康診査を受け、「○○機能要受診、要医療:○○、○○」と受診結果通知表に記載があった。
平成27年9月9日、F病院を初めて受診し、その後おおむね2か月に一度、少なくとも平成30年5月7日までの15回にわたり、同病院を受診し○○や○○の検査などを行った。平成29年7月31日の検査詳細情報では、○○及び○○の欄に基準値よりも高値を示す「H」の表示があった。
医師からの診断書には、D医薬品、E医薬品を服用するように指導したことが明らかでなかった。また、薬剤師が作成した書面においても「治療又は療養に必要な医薬品」であることが明らかではなかった。
B医薬品について
薬機法第14条第1項に規定する厚生労働大臣の承認を受けておらず、健康補助食品として販売していた。
C医薬品について
薬機法第14条第1項に規定する厚生労働大臣の承認を受けておらず、健康補助食品として販売していた。
D医薬品について
薬機法第36条の7第1項第2号に規定する第2類医薬品に該当し、効能効果は、虚弱体質、肉体疲労、○○の場合の滋養強壮とされていた。
E医薬品について
薬機法第36条の7第1項第3号に規定する第3類医薬品に該当し、効能効果は、虚弱体質、肉体疲労、○○の場合の滋養強壮とされていた。
(税務署の主張)
B医薬品、C医薬品については、薬機法第2条第1項に規定する医薬品でないので医療費控除の対象とならない。
D医薬品、C医薬品については、薬機法第2条第1項に規定する医薬品ではあるが、これらの購入が請求人母の治療又は療養に必要なものであったとは認められないことから医療費控除の対象とならない。
(不服審判所の判断)
B医薬品、C医薬品については、薬機法第14条第1項に規定する厚生労働大臣の承認を受けておらず、健康補助食品として販売されていたことから、その使用目的が食用に限定されているものであり、医療費控除の対象となる医薬品とは言えない。
D医薬品、E医薬品については、薬機法第2条第1項所定の医薬品に当たる。しかし、医師の処方せんがなくても薬局等で購入可能なものである。その場合、「治療又は療養に必要な医薬品の購入」に該当するかが必要となるが、医師等から「治療又は療養に必要な医薬品」で服用の指導等がないことから医療費控除の対象となる医薬品とは言えない。
(税務調査でやるべきこととは)
医師等の指導による服用であることが分かる資料を税務調査時に示すことができるようすることが必要です。
(日々でやるべきこととは)
医師の処方箋がなくとも薬局等で購入できる医薬品を医療費控除の対象とするには、医師から「治療又は療養に必要な医薬品」との指示があるという明確な書類を入手することが必要です。
単に医師に「服用しても大丈夫か。」との質問をして「大丈夫。」という回答を得たとしても、それは、「治療又は療養に必要な医薬品」との回答ではなく、「治療又は療養に悪影響はない。」という回答でしかありません。必ず文書で「治療又は療養に必要な医薬品」である旨の書類を入手してください。
裁決
(令和元年5月22日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
類似している裁決事例(両方とも健康食品)
(平14.11.26裁決、裁決事例集No.64 172頁) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
(平17.3.15裁決、裁決事例集No.69 125頁) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)
・税金相談
・税務調査の対応などを
ご希望の方は
wonozeimu@gmail.com
までお気軽にご連絡ください。