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小規模宅地の特例の申告期限(令和3年6月22日裁決の一部)

相続税では、小規模宅地の特例を適用して相続税額を少なくする制度があります。

しかし、この小規模宅地の特例には、厳しい要件があり、その要件を満たさない場合、特例によって相続税額を少なくすることができなくなります。

小規模宅地の特例の要件の一つとして、相続税の申告書に、この特例の適用を受けようとする旨を記載するとともに、小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。

しかし、相続税の申告期限は、通常、亡くなった方(被相続人)の死亡日の翌日から10カ月なっており、それまでに、遺産分割の協議が完了できないことも多くあります。その場合、申告期限までに遺産分割協議書の写し等を相続税の申告書に添付することはできず、この特例を適用することができなくなってしまいます。そのため、税の公平性の観点から、相続税の申告書に「申告期限後3年内の分割見込書」を添付し、その後、相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、分割が行われた日の翌日から4か月以内に「更正の請求」を行うことで、この特例の適用を受けることができます。

今回のケースでは、特例を適用する相続財産の分割協議が決まってから4か月を超えてしまったため、この特例が認められなかったものです。

 

(状況)

Aさん(被相続人)は、平成29年11月○日に死亡し、その相続が開始した。Aさんの相続人は、BさんとCさんの二人である。

Bさん(相続人)とCさん(相続人)は、相続税の申告期限内となる平成30年9月25日に相続税の申告書を税務署へ提出した。この申告では、この特例を適用できる相続財産は分割協議ができていないため、この特例を適用せず法定相続分で申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した。

Bさん(相続人)とCさん(相続人)の間で、平成30年12月26日に、この特例を適用できる相続財産の遺産分割協議が決まった。

Bさん(相続人)とCさん(相続人)の間で、令和元年6月17日に、その他の未分割のすべての相続財産についての遺産分割協議が決まった

Bさん(相続人)とCさん(相続人)は、令和元年6月18日、相続の遺産分割がまとまったとして、この特例を適用した相続税の更正の請求をしたが、税務署から、この特例の適用は認められないので、この特例を除いた更正の請求をしてほしいとのことで、令和元年10月4日この特例を除いた更正の請求をした。

Bさん(相続人)とCさん(相続人)は、令和元年12月23日、この特例を適用することを求めて、再度、この特例を適用した更正の請求をしたが、税務署はこの特例の適用を認めなかった。

 

(税務署の主張)

相続税法の条文からは、この特例を適用できる期限は、この特例を適用できる相続財産が申告期限から3年以内に分割された場合であると考えられ、したがって、この特例を適用できる相続財産が分割された日は。この特例を適用できる相続財産の遺産分割協議が決まった日となる。

平成30年12月26日、この特例を適用できる相続財産について遺産分割をしたのであるから、同日が、分割されたことを知った日である。そして、Bさん(相続人)とCさん(相続人)は、更正の請求を、平成30年12月26日の翌日から4月以内の平成31年4月26日までにする必要があったがしなかったので、この特例の適用はできない。

 

(Bさん(相続人)とCさん(相続人)の主張)

この特例が適用できる相続財産が申告期限から3年以内に分割されたというのは、全ての相続財産が申告期限から3年以内に分割されたと解釈して更正の請求を認めるべきである。

この相続では、遺産分割協議が長引く状況にあり、土地の分割協議は飽くまでその過程の一部であって、この特例の選択いかんによって代償財産の価額が異なるなど、最終的に全ての遺産分割が確定するまでの期間が必要とされた。したがって、この特例が適用できる相続財産に関する遺産分割の協議書の日付は、書類を作成した日にすぎず、未だ遺産分割の中途であって、この特例を適用できる相続財産を分割が生じたことを知った日であるとの認識が全く無いものであり、最終的に遺産分割協議を行った令和元年6月17日がその事由が生じたことを知った日に該当する。

 

(不服審判所の判断)

この特例が適用できる相続財産の遺産分割は、この特例が適用できる相続財産の遺産分割によって遺産分割されたものと認めるほかなく、他の遺産について分割を終えるまで未分割であったことにはならない。

この特例が適用できる相続財産の遺産分割は、平成30年12月26日付で、Bさん(相続人)とCさん(相続人)によって、遺産分割の協議書が作成され、その翌日には本件相続を原因とする所有権移転登記も申請されている一方、他の日にされたと認めるべき事実がないから、その作成日付のとおり平成30年12月26日に本件遺産分割がされ、同日、請求人らが知ったものと認められる。

この特例の適用についてされる更正の請求は、遺産分割の日の翌日から4月以内にしたものに限られることとなり、Bさん(相続人)とCさん(相続人)は、更正の請求をしなかったことから、その後にされた更正請求が4か月以内にされたものに該当することはなく、更正の請求は認められない。

 

(日々でやるべきこととは)

このケースでは、Bさん(相続人)とCさん(相続人)もしくは税理士が、どのような状況になったら更正の請求をしなければならないか相続税法等のきちんと理解していなかったことか、もしくは、税理士に遺産分割協議の状況を適切に伝えていなかったことが原因で、特例の適用が認められませんでした。

小規模宅地の特例の適用ができる相続財産が未分割の場合、更正の請求を行う起算となる日は、最終的な遺産分割協議に関わらず、この特例が適用できる相続財産の分割協議が決まった日であり、この点に、十分留意することが必要です。

相続税の申告は、不動産がなく、また、特例の適用等がない場合には、自分でできないことはありません。しかし、不動産があった場合や特例の適用等をする場合には、不動産の評価金額の計算や特例の適用の要件が難しいこともあり、税理士にお願いした方がいい場合が多くあります。

 

裁決

(令和3年6月22日裁決)| 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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