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為替差益の収益認識のタイミング(平成28年6月2日裁決の一部)

外貨建ての預金を保有している場合、外国通貨と円との相場の関係で、為替差損益が生じます。外貨建ての預金を動かさず。引出して円に両替したり、円の預金に振替えたりしなければ、所得税法上、所得に該当しません。しかし、円に両替、円の預金に振替えたりした場合には、為替差損益が生じ、所得税法上は雑所得に該当することになります。

税法に詳しくない人にとっては、単に、外貨預金を円預金に振替えただけなのに、所得税が発生するイメージはありませんが、外貨建ての預金を保有して出金をした場合には、所得税の納付が必要となる場合があります。

 

(状況)

Aさんは、平成21年5月29日、Aさん名義の外国通貨建預金を開設した。

Aさんは、外国通貨建預金の開設以後、外国通貨建預金の預入れ及び払出しについて、全てを円建預金との間の振替の方法により行っていた。

Aさんは、平成25年分の雑所得については公的年金に係る所得金額のみを法定申告期限内に行っていた。

税務調査で、外国通貨建預金の円建預金への払出しによって生じた為替差損益は雑所得に該当するとした上で、平成25年中の外国通貨建預金の円建預金への払出しにより生じた為替差損益の合計額を雑所得の金額に加算した更正処分を行った。

Aさんは、これらの為替差損益は外国通貨建預金を開設した平成21年5月29日から平成25年11月11日(平成25年中の最終払出日)までに行われた取引であるから、為替差損益の額は当該期間における取引を基礎として計算されるべきであるとした。

 

(税務署の主張)

外国通貨建預金から米ドルが引き出されると同時に円貨により円建預金に入金されていることからすると、為替差損益は雑所得に該当し、その収入すべき時期は、米ドルを引き渡して円貨を取得した日とするのが相当である。

 

(不服審判所の判断)

この取引は、外国通貨建預金と円建預金との間の振替による取引であり、取引の金額の円換算額については、取引を行った時における為替相場により換算した金額とされる。外国通貨建預金の払出時における円換算額(円交換額)とその預入時における円換算額(円交換額)との差額、すなわち為替差損益については、米ドルを円貨に交換して外国通貨建預金から払い出した時に収入すべき金額が実現したものとして、所得として認識する必要がある。

所得税法は、1暦年を単位としてその期間ごとに課税所得を計算し課税を行うことを前提に、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額はその年において収入すべき金額とする旨規定しており、Aさんの平成25年分の雑所得の金額に算入すべき為替差益の金額は、平成25年中において米ドルを円貨に交換して外国通貨建預金から払い出したそれぞれの時に生じた為替差損益の額の合計額とすべきである。

したがって、平成25年分の為替差益の金額のみを、Aさんの平成25年分の雑所得の金額に算入すべきこととなる。

 

(日々でやるべきこととは)

外国通貨建預金を持っている場合には、外国通貨建預金から払いだしたときに円建預金に振替えたり、円に両替した時に、雑所得が発生することになるので、払出の日、金額等をきちんと把握しておくことが必要です。

為替差損益の計算は、平均法などいろいろあるので、その計算方法を理解して、為替差損益が正しく計算できるようにしておくことが必要です。

今回のケースでは、円建預金に換算しただけですが、外国通貨の預金から別の外国通貨の預金に振替えた場合でも、為替差損益を認識することになり、雑所得に該当することになりますので留意が必要です。

 

外国通貨建預金もそうですが、暗号資産についても同じことが言えます。外国通貨建預金は、ドル、ユーロ等主要なものはあまり多くありませんが、暗号資産は膨大な数になります。また、投機的に暗号資産の取引を行ったりする方もいらっしゃるので、差損益の計算やタイミングをきちんと把握して申告をしなければなりません。

 

裁決

(平成28年6月2日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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