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減価償却費の損金算入のタイミング(平成30年3月27日裁決の一部)

法人税において、減価償却費は損金経理(会計上費用処理)した金額までしか損金として認められておりません。また、減価償却費として任意の金額を損金経理(会計上費用処理)しても全額認められるわけでなく、損金経理(会計上費用処理)された金額のうち償却限度額までが法人税法上損金に認められることになります。償却限度額より超過している部分については、次期以降、償却限度額よりも損金経理(会計上費用処理)した金額の方が小さい決算期において、超過金額か償却限度額に足りない金額のどちらか小さい金額が損金に認められます。

減価償却資産を購入する等の新規取得があった場合、その資産が事業の用に供したときから減価償却費が損金算入できるようになります。つまり、事業の用に供していなかった場合には、損金経理(会計上費用処理)した金額は損金として認められません。事業の用に供していなかった場合におけるこの損金として認められない部分が償却超過の金額なのか、それとも違い性質のものなのかどのように判断するのでしょうか。

 

(状況)

会社は、太陽光発電設備を取得して、電力会社に電力を供給(売電)することを計画し、電力会社に対して、太陽光発電設備を電力会社の送電網に接続する系統連系工事について、その工事開始希望日を平成26年2月3日とする書類を提出した。

会社は、設備設置会社との間で、太陽光発電設備に係る太陽光発電パネルの設置等工事について、工期を平成26年1月中旬から同年3月中旬まで及び引渡期日を完成日から14日以内とする請負契約を締結し、平成26年3月25日、太陽光発電パネルの設置等工事が完了し、同月27日に引渡しを受けた。

会社は、平成26年3月26日付で、電力会社に対して、系統連系サービス開始希望日及び受給開始希望日をいずれも平成26年8月31日とする旨記載した書類を提出し、これに対して、電力会社は、平成26年8月4日付で、会社に対して、太陽光発電設備に係る電力の受給開始予定日を平成26年10月3日とする旨記載した書類を交付した。

会社は、平成26年10月3日以降、電力会社に対して電力の供給を開始した。

会社は、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度である平成26年3月期の法人税について、平成26年3月27日に太陽光発電設備を取得し、同日に事業の用に供したとして、太陽光発電設備につき普通償却費の額及び特例を利用して特別償却費の額を損金の額に算入し、法定申告期限までに申告した。

会社は、平成27年3月期及び平成28年3月期の法人税等について、いずれも法定申告期限までに申告した。

会社は、税務調査を受け、太陽光発電設備は、平成26年3月期において電力会社に対して電力の供給を開始しておらず、事業の用に供されていないとして、平成26年3月期の法人税について、減価償却費計上額を償却超過額として所得金額に加算し、修正申告書を平成29年4月12日に提出した。

会社は、平成27年3月期において太陽光発電設備を事業の用に供したことから、償却不足額として普通償却費の額及び特別償却費の額を平成27年3月期の損金の額に算入すべきであり、また、これにより平成28年3月期の損金の額に算入する欠損金の控除額が増加するなどとして、平成29年4月12日に、平成27年3月期及び平成28年3月期の法人税について更正の請求をしたが更正の請求について認められなかった。

 

(税務署の主張)

太陽光発電設備は、電力会社に対して電力を供給し、事業の用に供した平成27年3月期において、減価償却資産に該当することになるのであり、平成26年3月期における減価償却資産には該当しない。

そうすると、平成26年3月期において減価償却費として計上した金額は、減価償却資産に該当しない資産について減価償却費を計上したことになり、償却超過額が存在しないことになるから、平成27年3月期において、会社主張する減価償却額を損金の額に算入することはできない。

特別償却費は、太陽光発電設備を事業の用に供した日の属する事業年度に限って適用されるところ、会社は、太陽光発電設備を事業の用に供した平成27年3月期の確定申告時において、特別償却の適用を受けていないから、平成27年3月期の更正の請求において、会社が主張する償却額を所得金額から減算することは認められない。

 

(不服審判所の判断)

減価償却資産の範囲は、法人税法及び法人税法施行令で、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち事業の用に供していないものを除くと規定されている。

したがって、事業年度終了の時において事業の用に供していない資産は、その事業年度における法人税法上の減価償却資産に該当しないこととなる。

これを太陽光発電設備についてみると、平成26年3月期終了の時においては事業の用に供されていないから、法人税法上の減価償却資産に該当しないこととなり、平成26年3月期に減価償却費として計上された金額に関しては、平成26年3月期において減価償却費として損金経理していたとしても、それは法人税法上の減価償却資産に該当しない資産に係るものであるから、減価償却資産に係る損金経理額に該当しないこととなる。

平成26年3月期の減価償却費計上額は、資産として計上すべきところを誤って減価償却費として損金の額に算入していたため、損金不算入額として所得金額に加算されたにすぎず、平成26年3月期における法人税法上の減価償却資産に係る償却超過額にも当たらないことなる。

したがって、平成27年3月期において、前期以前の償却超過額がなかったのであり、また、平成27年3月期に減価償却費として損金経理(会計上費用処理)がされていないことから会社が主張する減価償却額は、平成27年3月期の損金の額に算入することはできない。

 

(日々でやるべきこととは)

減価償却の開始は、事業の用に供したときからであるので、十分留意する必要があります。

事業の用に供する前に減価償却費として損金経理(会計上費用処理)したものは、償却超過額として認められないことから、誤りが判明した年度から必ず損金経理(会計上費用処理)をことが必要です。

 

事業の用に供する前に損金経理(会計上費用処理)で計上した減価償却費を償却超過額として認められないことは非常に納税者にとって非常に厳しい判断と思います。

通常、今回のケースは税務調査で指摘されて修正することになります。定率法を採用している減価償却資産の場合、翌期以降の償却限度額も変わってくるため、償却不足が生じることとなり、その影響が多大になります。

確かに、法人税法上、その通りなのかもしれませんが、柔軟に対応できないものかと思います。

 

裁決

(平成30年3月27日裁決) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所 (kfs.go.jp)

 

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