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修繕費の損建区分 その2(昭和63年10月25日裁決の一部)

建物を修繕したとき、その支出が建物の取得価額として固定資産に計上されるのか、それとも修繕費として損金算入か、よく問題になります。

また、修繕したタイミングが建物を購入した時なのか、ずっと建物を使っていたかによっても結論が変わることもあります。

このケースでは、修繕費として認められました。

 

(状況)

A社は、鉄筋コンクリート造陸屋根平屋建の賃貸用建物15棟の補修を行い、当該補修工事に要した費用を修繕費として当期の損金の額に算入した。

建物は、外国人向けの賃貸住宅として建築されたものであり、一般の建物に比較して簡易な構造で建築されている。

建物は、昭和38年に建築されたもので、建築後約25年が経過し、屋根、軒及び外壁等の相当部分に欠落兆候が生じかなり危険な状態になっていた。

建物は、老朽化が著しく、屋根の亀裂及び凹凸等の劣化部分から雨漏りが生じ、やむなく防水処理を行ったものである。

屋根の相当部分に劣化現象が生じたことから、部分的な補修では原状を維持することは不可能であり、全面的補修を余儀なくされたものである。

屋根工事に当たって、従来の屋根に新たにスラブを打つ、いわゆる「かさ上げ工法」によることは、本件建物の構造が簡易なため当該重量に耐えられないことから、軽量で安価な防水膜使用による工法によったものである。

屋根工事は、本件建物の劣化が著しいため、防水シートのみを使用する防水工事(C工法による防水工事)では、下地構造物の亀裂や動き、下地の凹凸、突起物等が直接防水シートに反映して防水層に損傷が生じ、所期の目的を達することができないことから、下地構造の亀裂や動き等に極めて強い抵抗性を有する防水膜、すなわち防水シートの下地面にポリエチレンフォームをラミネートしたものを使用する防水工事(CS工法による防水工事)によったものである。

CS工法による断熱防水工事は、質的には中以下程度のものであり、また、単なる防水膜の貼付にすぎないので屋根の効用価値や建物の強度を高めることにはならない。

 

(税務署の主張)

屋根工事は、CS工法によって建物の主要部分である屋根を断熱防水シートで全面的に張り替えたものであるから、従来の屋根より良い材質のものを付加したことになり、建物の価値は、増加したことになる。

 

(納税者の主張)

屋根工事は、塩分含有生コンクリートの使用及び老朽化による鉄筋の発錆により、屋根の相当部分に亀裂が生じかなり危険な状態になったので、これを防止するために行ったものであるから、原状回復のための補修工事であり、工事費は修繕費に該当する。

 

(不服審判所の判断)

法人税法施行令第132条は、内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもってするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額のうち、その支出により、

①当該資産の取得の時において、当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

②当該資産の取得の時において、当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

については、資本的支出に該当し、損金の額に算入しない旨規定している。

そして、同条第1号及び第2号の文言からすれば、支出による当該資産の使用可能期間の延長又は価額の増加の有無の判断は、固定資産取得後に通常の管理又は修理がされることを前提として、当該資産を取得した時点で予測される「その支出をした時点の当該資産の使用可能期間又は価額」を基準としてされることは明らかである。

そうすると、固定資産について支出した金額が資本的支出又は修繕費のいずれに該当するのかは、当該資産を取得した時点で予測される「その支出をした時点の当該資産の使用可能期間又は価額」に比べて、その支出によって当該資産の使用可能期間が延長したり、価額が増加したか否かを、その支出の内容及び効果等の実質に照らして判断することが相当である。

屋根工事は、屋根の相当都分に亀裂が生じ部分的な補修では原状維持は不可能となったことから、全面補修を余儀なくされたこと及び建物の劣化が著しいため、防水シートの貼付だけでは下地構造物の亀裂等に耐えられないことから、ポリエチレンフォームを使用する工法によったものと認められ、このような防水膜を貼付する程度のものでは特に本件建物の改良を行ったとはいえないので、本件屋根工事は単なる原状回復のためになされたものと認めるのが相当である。

屋根工事のための支出は、主として屋根の防水処置のためにされたもので不動産貸付業を営む者が通常、周期的に行っている資産の維持管理のために必要な費用の範囲のものと認められるから、これを資本的支出とするのは相当でない。

 

(日々でやるべきこととは)

屋根工事や壁の補修工事には足場が必要となることが多く、工事費が多額になることが多いです。

しかし、工事費が多額となったとしても、その工事内容が周期的に行っている資産維持のために必要なものであれば、修繕費として損金算入できます。

工事内容がどのようなものかきちんと把握して、税務調査できちんと説明ができるようにしておくことが必要です。

 

裁決

タインズから出典

【沖裁(法)昭63-2】

 

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