まさか、訴訟になるなんて!-損害賠償を求める納税者に対して- 007 (平成18年5月)
東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。
すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。
納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。
<参考判決 東京地裁平成17年7月14日判決(国側勝訴・確定)>
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国税訟務官室が訴訟を担当することとなった場合、事案を確認するために当時の調査担当者や統括官と面談することとなります。
面談すると「まさか、訴訟になるなんて」と驚きの言葉をよく耳にします。訴訟が提起されるのは、通常、課税処分等に伴うことが多く、異議申立てや審査請求を経て相当の期間が経過した後のこととなるため、調査担当者の当時の記憶が薄れています。しかし、損害賠償請求をするような納税者とのやり取りについては、徐々に記憶がよみがえってくるようですが、それでも、当時作成したメモ等見ることが記憶を呼び覚ますのに大変役に立ちます。
損害賠償事件は事実関係が特に重要です。事案関係の主張は訴訟の初めに行いますが、ここで事実を間違えて言ってしまうと、矛盾点が生じ、裁判官の心証を大きく損なうことになるので、十分記憶を呼び覚まし、訟務官室との打合せを通じ、正しい事実関係を構築することが重要です。
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税務調査等で、審査請求(不服審判所)や裁判になることはそれほど多くありません。しかし、全くないわけではありません。
2021年度でみると、全国の不服審判所の審査請求は2482件で1日に6.8件、訴訟は189件で1日に0.5件程度発生していることになり、それなりにあることになります。
税務署は、税務調査時にはメモ等作成するよう注意喚起しています。
税務上の問題になったときに、言った言わないとの水掛け論になることがあります。そのとき、文書化をしている税務署側と何も資料がない納税者側のどちらが信用性が高くなると思いますか。
当然、文書化している税務署側になってしまいます。納税者側でも文書化をし、審査請求や裁判になったときに有利になるようにすることが望まれます。
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