税務調査は怖くない

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他人名義財産の帰属の判断基準-財産の名義人がその財産を管理運用していたとしても、その財産が名義人に帰属するとは限らない- 020 (平成21年6月)

東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。

すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。

 

納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。

 

<参考判決 東京地裁平成20年10月17日判決(国側勝訴)>

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裁判所は、訴訟当事者が証拠により立証した事実を基に、課税処分の適法性について判断することになりますので、裁判所がどの証拠を基に、どう事実認定をしたかによって、判決内容は大きく異なります。

したがって、訴訟において、国側の主張のとおりであると裁判所に判断してもらうためには、信用性の高い証拠を積み重ねて立証する必要があります。信用性の高い証拠の収集は、調査段階において、納税者の主張を覆す格好の材料となりますし、さらに、以後の不服申立てや訴訟における有効な証拠にもなります。

1 供述の信用性

実務では、課税に必要な契約書、領収書、通帳やメモ等の物的証拠が十分ではないケースが多く、調査担当者が、納税者はもちろん取引先や従業員あるいは家族などの関係者からの供述等(人的証拠)によって、数少ない物的証拠をつなぎ合わせて課税要件事実を組み立て、課税しているケースが少なくないと思われます。

このように、人的証拠である供述(供述証拠)は、時間的に見れば点と点である物的証拠を一連の行為等として結びつけるものであり、重要な証拠といえます。

しかしながら、訴訟上、人的証拠は、一般的に、物的証拠に比べて証拠価値が低いといわれています。なぜなら、人は、思いこみがあったり、間違えたり、忘れたりあるいは嘘をついたりする場合があり、物的証拠に比べその内容が事実と相違している可能性が高いからです。

したがって、訴訟上、供述証拠にどれだけの信用性があるか、すなわち、「証拠に裏付けられた供述」となっているかどうかは非常に重要なわけですが、その信用性を評価するポイントは、次のとおりといわれています。

(1) その供述が一貫・安定しているか、変遷・動揺しているか。

供述が変遷している場合には、その変遷に合理的理由があるか。

(例) Aの証言は、調査段階から一貫しており、反対尋問によっても崩れていないから、信用性が高い。

(2) その供述が客観的な事実と合致しているか、矛盾しているか。

(例) 調査担当者に対するAの供述は、・・・という事実があることからすると、客観的証拠による裏付けがあり信用できる。

(3) その供述が他の供述証拠と符合しているか。

(例) 銀行員A、B及びCの供述は客の特徴について概ね符合し、相互にその信用性を補強している。

※ A、B及びCの供述は一致するが、Dの供述は一致しない場合、一

致する3名のみの供述のみを採用するのではなく、Dの供述の信用できない理由をよく書く必要がある。

(4) その供述が具体的、詳細、自然、合理的であるか。その供述に迫真性、臨場感があるか。

(例) Aの供述は、具体的かつ詳細で、臨場感が認められるから、信用性が高い。

(5) その供述の根拠はなにか。

(例) Aは、その供述内容について・・・と具体的根拠を挙げており、信用に値する。

(6) 供述者の立場はどうか、嘘をついたり、隠したりする動機があるか。

(例) Aは、たまたま目撃した第三者であり、原告と何らの利害関係を有しないのであるから、Aの供述は信用できる。

これらのポイントに基づいた関係者からの聴取り等は、訴訟だけでなく、調査においても納税者を納得させる有効なものといえますし、場合によっては、今後の調査の展開に有効なものとなることも考えられますので、常に、このポイントを念頭においた聴取り等を行うことは重要です。

2 「処分証書」の信用力

実務上、課税の可否については、調査によって収集した資料等(証拠)を基に判断することになりますが、一口に証拠といっても、上記1で述べたとおり、契約書や帳簿、さらには領収書やメモなどの物的証拠と納税者あるいは関係者の供述や証言などの人的証拠がありますが、この中で物的証拠である「処分証書」は信用性の高い証拠とされています。

調査担当者が、訴訟上、処分証書がどのように取り扱われているかを覚えておくことは、課税の可否を判断する上でも非常に役に立つと思いますので、その概要を説明します。

「処分証書」とは、契約書、遺言書、手形など当事者の意思表示が法律行為(法律上の効果を生じさせる行為であり、例えば、売買や賃貸借の契約がある。)として記載されたものであり、訴訟上、特段の事情がない限り、処分証書に記載された内容のとおりの取引等がされたと認められます。

なぜ、特段の事情がない限り、処分証書に記載された内容のとおりの取引等が認定されるかといいますと、例えば、契約書を取り交わすということは、相手方と取引等をするに当たり、後日紛争が生じないようにするために、あるいは、損害等が生じたときに責任の所在や限度を明らかにするために作成されるものであり、契約書には、契約当事者が合意した内容を明記しているからです。

したがって、調査段階において、契約書等に記載されている契約内容に経済的合理性がないと認められたとしても、そのことのみをもって課税した場合、訴訟上、その契約書等の信用力を覆すことは難しいと思われます。処分証書を否定する場合には、①処分証書と異なる合意が存在する、②ものの流れや金の流れが契約書のとおりになっていないなど契約書の内容が実態とは異なるなどの証拠を積み重ねて、特段の事情を主張・立証する必要がありますので、これらの点についても調査し、それに基づいて課税の可否を判断して頂きたいと思います。

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今回も、「調査に生かす判例情報」を長く引用しました。

 

税務調査で気にすべき点が多数あります。

 

1 供述の信用性

税務調査で税務職員からヒヤリングを受けることがあります。質問応答記録書(税務調査のやり取りを書面にしたもの)を取るケースもありますが、質問応答記録書を作成せず、ヒヤリングのやり取りをメモしておくこともあります。

すべての税務職員ではありませんが、その税務職員が想定した取引があったような回答を期待して、質問をするケースがあります。税務職員からヒヤリングを受ける場合には、非常に注意しながら回答することが望まれます。

 

2 「処分証書」の信用力

契約書等を事実に基づいて作成し、また、その通りの金銭のやり取りをするなど、誤解を招かないようにすることが望まれます。

 

 

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