税務調査と税務訴訟では、課税庁の主張がちがう?
とある、研修会での裁判例の研究で驚くことがありました。
(公開されていない判決文なので、内容、金額は若干ぼかしています。)
争点としては、過大の役員報酬なのですが、税務調査とその訴訟での課税庁側の適正な役員報酬額に大きな差がでてしました。
実際には、3年分否認されており、それぞれの年で金額や役員の人数も違っているのですが、わかりやすく1年だけで、金額も若干変えていますが、状況はぼぼ同じ感じです。
・納税者は、役員報酬を240,000,000円で確定申告をしました。
・税務調査があり、その時税務署は、90,000,000円を適正な役員報酬額として算定し、更正処分を行いました。
・納税者は、税務調査の結果を不服として、再請求を税務署に行いましたが、その時、税務署は70,000,000円を適正な役員報酬額として算定し、税務調査での算定額の方が高いので、更正処分は問題ないとしました。
・納税者は、再請求の結果を不服として、不服申し立てを行いましたが、その時、不服審判所は70,000,000円(再請求の時と同額)を適正な役員報酬額として算定し、税務調査での算定額の方が高いので、更正処分は問題ないとしました。
・納税者は、不服審判所の結果を不服として、地裁に税務訴訟を起こしました。その時、課税庁は20,000,000円を適正な役員報酬額として算定しました。
・判決は、70,000,000円(再請求及び不服審判所と同額)を適正と算定した役員報酬額としました。
納税者の実際の役員報酬額
240,000,000円
税務調査で課税庁が適正と算定した役員報酬額
90,000,000円
再請求により課税庁が適正と算定した役員報酬額
70,000,000円
不服審判所が適正と算定した役員報酬額
70,000,000円
税務訴訟で課税庁が適正と算定した役員報酬額
20,000,000円
裁判所が適正と算定した役員報酬額
70,000,000円
税務調査、再請求、不服審判所、税務訴訟での課税庁の主張、裁判所の結果のすべては、同地区で同業種で同規模の会社の平均を取って算定しています。
となると、本来であれば、それほど金額が違ってくることはありえないと思います。しかし、税務調査と再請求では20,000,000円の違い、税務訴訟では70,000,000円もの違いが生じています。
この違いがなぜ起きたのかは、判決文からは判断できませんが、しかし、税務訴訟において、課税庁は明らかに算定した会社は計算方法を変えて主張してきていると推測できます。
税務訴訟では、課税庁が税務調査等の時と主張を変えてくることがあると言われていますが、もし、そうであるならば、税務調査の結果は、どのような意味があるのでしょうか。違った理由で処分を受けるということを納税者は受け入れなくてはいけないのでしょうか。
少なくとも不服審判所において結果を尊重して、課税庁は税務訴訟を行うべきではないのでしょうか。
また、納税者としては、課税庁が主張を変えてくることも想定して、税務訴訟を行うかどうかを判断することが必要です。
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