推計課税の理論と適用・推計課税の要件及び具体的手続・-推計の必要性と合理性要件の充足のために- 022 (平成21年10月)
東京国税局課税第一部国税訟務官室では、税務署職員に対して「調査に生かす判決情報」と題して「調査手続」や「証拠の収集と保全」など調査等に役立つポイントについて、具体的事例や判例を紹介しながら、数回に分けて発信しています。
すべてが正しいとは思えませんが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言います。税務署がどのように考えているのかを知ることは重要です。
納税者意識の高まりを受けて、課税処分の所得金額の争いにとどまらず、調査手続の違法性を併せて争う事例が増加していることから、税務署に以下のように注意喚起をしています。
<参考判決 東京地裁平成20年11月14日判決(地裁・高裁 国側勝訴)>
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推計の必要性の判断基準は、更正処分時である。
推計の合理性は、近似値を算定しうる一応の合理性が必要。
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1 推計課税とは
税務調査で間違え等があることにより課税される場合、帳簿書類等の資料に基づく実額によりなされます。しかし、税務調査で納税者が協力的でなかったことにより収入や経費を裏付ける直接資料を入手できなかった場合や質問検査権の行使によっても取引額を把握できない場合、課税庁は間接資料を用いた推計により所得を計算し課税することがあります。この間接資料を用いた推計により所得を計算して課税することを推定課税と言います。
課税庁がどのような場合でも推定課税を行うことができるとすると、きちんと調査をせず課税を行う可能性があるため、推定課税を行うには要件があります。
推定課税の要件は
・帳簿書類の不存在、帳簿書類の不備
・調査非協力等の事由により実額の把握が不可能又は著しく困難なこと
があります。
また、判例等で、税務署から更正処分等がなされた後に帳簿書類等を提出しても推定課税を違法ということはできないということになっていますので、少なくとも税務調査に協力をしていれば推定課税はされませんので、税務調査は、できる限り協力的に行うことが望まれます。
なお、当たり前のことですが、税務調査に来た税務職員が理不尽なことをするのであれば、税務署や国税局にきちんとその旨を主張することは必要です。
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