税務調査は怖くない

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消費税はどの所得から発生したのか。譲渡所得にかかる消費税が不動産所得等の必要経費になるのか。

7月10日の記事と同じように、これも研修での裁判例でした。

 

事例をわかりやすくしたので、事実と違っています。

・不動産所得のある納税者が税抜50,000,000円、税込55,000,000円の建物を売却した。取得費が60,000,000円であったため、不動産所得は譲渡損となった。

・不動産所得の課税売上が税抜20,000,000円、税込22,000,000円あった。

・不動産所得の課税仕入が税抜5,000,000円、税込5,500,000円あった。

・この納税者は、税込処理で会計処理をしていた。

・納税者は、納付すべき消費税を6,500,000円(5,000,000円+2,000,000円―500,000円)と計算した。

・納税者は、不動産所得を納付すべき消費税6,500,000円を全額必要経費として、不動産収入から差引いて不動産所得を計算し、不動産所得を10,000,000円(22,000,000円-5,500,000-6,500,000円)として申告した。

・税務調査により、建物の売却に係る消費税5,000,000円を必要経費として認めなかった。

・税務訴訟で高裁まで行ったが納税者は敗訴した。

 

消費税は、基本的に会計処理を「税込」で行おうが「税抜」で行おうが、その利益(所得)には、変わりがないことになっています。

 

売上 110円(税込) 原価 66円(税込)の場合

・納める消費税4円

・税込の利益=40円(売上110円-原価66円-納める消費税4円)

・税抜の利益=40円(売上100円-原価60円)

で両方とも利益は40円になります。

 

判例での納税者の場合、税込と税抜でどのようになったのでしょうか。

納税者の計算

不動産所得 10,000,000円(22,000,000円-5,500,000円-6,500,000円)

譲渡所得 5,000,000円(55,000,000円-60,000,000円)

税抜での計算

不動産所得 15,000,000円(20,000,000円-5,000,000円)

譲渡所得 △10,000,000円(50,000,000円-60,000,000円)

納税者の計算と税抜きでの計算で5,000,000円の差が出てしまいました。

 

この差は、納税者が不動産所得から建物の譲渡にかかる消費税を差し引いてしまったからです。

 

本来の税込処理であれは

不動産所得 15,000,000円(22,000,000円-5,500,000円-500,000円(不動産所得分の消費税))

譲渡所得 △10,000,000円(55,000,000円-60,000,000-5,000,000円(譲渡所得の消費税)

となるはずです。

 

納税者(税理士が記帳代行を行っていたようなので、実際には税理士が行っています)が、不動産所得の会計システムに入力するときに、譲渡所得の消費税の納付額も含めて、不動産所得に必要経費として入力してしまい、納税者(税理士)は、それに気づかずに申告してしまったことが原因です。

 

納税者(税理士)は、消費税の納付は必要経費になるのであるから、税務訴訟に踏み切ったようです。

また、譲渡所得の消費税と不動産所得の消費税を区分することは、消費税法国税庁のHP、その他書籍や一般のHPに記載がないとのことで、高裁まで戦ったようです。

 

しかし、消費税と所得税の結びつきと考え方から、

税込処理をした場合、納付する消費税が発生した所得から納付する消費税を必要経費とする。

というのが理論的であり、また、実際の正しい処理であると思います。

 

納税者(税理士)は、会計システムで出た結果なのでそれが正しいと考えたようです。しかし、当たり前のことですが、入力が違っていれば結果も違ってきます。

 

税務調査では、結果ではなく、入力(考え方)が正しいかをきちんと見直すことが望まれます。

 

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